「DIY? チャラいんだよ、イモ野郎」極悪ドゥームデュオ TALBOT 極悪インタヴュー

2011年 文・インタヴュー:Stone Harbour Touring


※本記事はペキンパー第弐号に収録されていたものの再録です。

本誌が刊行される頃にはすでに多くの人をノックアウトしているかと思いますが、エストニアより来日する極悪ドゥーム・デュオ TALBOT のインタヴューを行いました。バンドはベース・シンセの Magnus Andre とドラム・ヴォーカルの Jarmo Nuutre からなる二人組で、サイケデリックかつパワフルなドゥームサウンドがウリです。クラシック音楽の盛んなエストニアですが、なかなかアンダーグラウンドな音楽シーンの模様が伝えられていないので、そういったことも含めリーダー的存在の Jarmo に訊いてみました。

Stone Harbour (以下 SH )
こんにちは。ではまずはバンドのヒストリーを教えていただけますか? 他にもやっていたバンドとか、ベースの Magnus との出会いも教えてください。

Jarmo Nuutre (以下 JN )
オーケー。そうさなぁ、俺たちはタルボットの前にも色々バンドやってて、マグナスとも前から違うバンドいくつかやってたんだよ。つってもマグナスとは共通のダチがいて、 10 年くらい前からつるんでるんだよ。

SH
はー、なるほど。ではタルボットのサウンドに関して、エストニアはかなり寒いと思うのですが、音楽やアートワークには何か影響はありますか?

JN
あー、それはかなりあるね。というか音楽とアートワークにはメチャクチャ影響してるよ。多分これからも何らかの形でインスピレーションは受け続けると思うよ。

SH
では何かバンドとしての夢はありますか? たとえばロードバーンでプレイしたいとか。

JN
もちろんロードバーンでやったら気持ちいいだろうけど、夢っていうのとは違うな。俺たちはとにかくカッケー音楽作って観客ぶちのめしたいんだよね。そんで今は日々精進してるってわけ。

SH
そうですか、ではエストニアのアンダーグラウンドなシーンはどうですか? 盛り上がってます? たとえばタルボットみたいな音楽とか、ドゥームとかストーナーとかへヴィな音楽のシーンっていうのはあるんですか?

JN
いや、もう、エストニアの音楽はアングラのもメジャーのも常に良いし、どんどん良くなってると思うよ。でもやっぱりドゥームがポピュラーとはいえないな。まぁ、シーンはあるけどね。 Shelton San とか Tolmund Mesipuu とかなんかはかっこいいから聴いてみなよ。

SH
へー、後で聴いてみます。ところで、あなたたちは DIY にこだわりがあって、ツアーにもたくさん出てるそうですが、 DIY とバンドライフのことを話していただけませんか?

JN
おい、あのなぁ、まず先に言っとくけど DIY ってのはチャラけたライフスタイルなんかとは違うんだよ。少なくとも俺たちにとってはな。そこらへんのイモ野郎は気取った「ライフスタイル」って意味で DIY っていうけど、俺たちが DIY でやるっつーのは全部自分でやりきるってことなんだよ。バンドでいえばレコーディングから、ミキシング、マスタリング、リリースとそれにまつわるすべての事をやるってことだよ。でも別に俺たちは何かルールを作ってるわけじゃないんだ。もうずっとそういう風にやってきたし、常にもっと良い手段があれば、古い方法を捨ててそっちでやることは躊躇しない。

ま、ツアーに関しちゃ俺たちはただツアーが好きってだけだな。やっぱツアーに出ていろんなバンドと知り合ったりするのはサイコーだって思うよ。

SH
そうですね、ではタルボットの音源を私たちに紹介してくれませんか?

JN
んー、じゃあいくつかの単語を言うからよく聞いておけ。へヴィ、サイケデリック、エクスペリメンタル、へヴィ、美、氷、ノイズ、へヴィ、暗黒、光、温もり、極寒、へヴィ。まぁ、とにかくアルバム聴いてくれや。

SH
わかりました。では、あなたはタトゥーパーラーを営んでいるそうですが、いつからやっているんですか? あなたはタトゥーだらけですが、エストニアではみんなタトゥーしてるんですか? 日本ではあんまりいませんよ。

JN
あぁ、俺は 1998 年だから… 14 の時からやってるよ。エストニアではみんなタトゥー入れてるし、もうほとんど普通の事になってきてるよ。でも日本ってみんな入れてるんじゃないの? 日本って昔からタトゥー文化あるだろ?

SH
あ、それは刺青ですね。タトゥーとはちょっと違うんです。でもなんで日本に来たいと思ったんですか?

JN
ま、一番の理由は前からずっと行きたかったって感じかな。そんだけだね。それに俺たちはどこででもやりたいんだ。Tour de Moon (月ツアー)はいつになるかな。

SH
では知ってる日本のバンドとか、対バンしたバンドとかはいますか?

JN
KK Null とか Terminal HZ 、 Acid Mothers Temple は観た事あるな。みんな KK 繋がりだろ? 他で知ってるのは Boris とか Coffins とか Grieved 、 Birushanah あたりかな。 Boris 以外は今回対バンするよな。

SH
ええ、お願いしてあります。では日本のファンにメッセージをいただけますか?

JN
お前ら首洗って待ってろよ! Let’s doom !

SH
…ところで、もしよかったらドラッグについてお訊きしても良いですか?

JN
あぁ、いいよ。

SH
では、エストニアで最も大衆的なドラッグは何ですか? それと、タルボットがライヴの時は楽屋にビールをセットしておくように聞きましたが、やっぱりあなたたちにビールはガソリンですか?

JN
まぁ、やっぱりハッパはみんなやってるよ。でもそれって世界中で同じだろ? で、ビールだけど、あった方がいいけどライヴ前にガンガン飲むってことはないな。それにビールだけじゃなくて水も欲しいな。

 

極悪ディスクレヴュー
タルボットは自主制作でいくつかの音源をリリースしているが、現在は簡単に手に入る音源がふたつある。
それは、2008年リリースの「ツンドラ地帯」と2010年の「EOS」だ。
どちらも彼らのbandcampから無料でダウンロードできるので、聴いて気に入ったら送金してあげて下さい。

「ツンドラ地帯」

2008年に自主リリースされたEPで、3曲収録されている。一音目からへヴィそのもので、全編にわたってマンモスが歩いているようなへヴィサウンドで埋め尽くされている。インタヴューで語っているように、アートワークもサウンドもツンドラの永久凍土を想起させる。アルバム「EOS」と同様にへヴィサウンドとヴォーカルのバランスがよく聴きやすいが、単純にスローでへヴィなドゥームサウンドが聴きたい場合は「EOS」よりもこちらの方がお勧めだ。というより、エクスペリメンタルな作られたサウンドよりもベースのへヴィネスを求めるなら断然こちらのEPの方がかっこいい。

「EOS」

2010年リリースのアルバム。自主リリースされたのちにロシアのポストメタル専門レーベルのスロー・バーン・レコーズから限定枚数再発された。エストニアのミュージックアワードで2010年のベストメタルアルバム部門にノミネートされたり、最近では現地新聞の過去二十年間のエストニア音楽ランキングで20位をマークしたりと、局地的にではあるがホットなアルバムだ。「ツンドラEP」よりもエクスペリメンタルな音作りで、自分たちの出したい音が定まったかのように思える。やはり全編重苦しいへヴィサウンドだが、勢いがあるパートもあるので緩急がついていて聴きやすい。ライヴはほとんどこのアルバム収録曲から演奏される。