SUMMONED BY GIANTS(US)とのツアーを直前に控えたドゥーム/スラッジ・トリオFLOATERSインタビュー

聞き手:梵天レコード

USシアトルのドゥーム/ストーナー・バンドSUMMONED BY GIANTSとの国内ツアーを直前に控えたドゥーム/スラッジ・トリオFLOATERSに、短めですがインタビューいたしました。2017年にリリースした1stアルバム『Waiting For Amnesty』に続く2ndアルバムも準備中とのことで、ますます目が離せません。

SUMMONED BY GIANTSにもインタビューしましたので、こちらも合わせてお楽しみいただけたら幸いです。
ツアーは4月13日土曜日からスタート。行きましょう!

――前回のインタビューから時間も開いてますので、その間のFloatersの活動を簡単にでいいので教えて頂けますでしょうか。

Mossa Hiro (Bass/Voice)
前回はアルバムリリース直前だから1年数カ月経つけど、その間はライブ、ライブ、ライブ、活動休止、復帰って感じかな。
2018年は本当に色々なバンドさんに呼んで貰ったりで毎週と言って良い位にライブやらせてもらった。
多くの方にアルバムも聴いてもらえたし関東以外にも何箇所か行けたし良い1年だったと思う。
まぁ11月にドラムのJunの病気でライブ活動休止になったけど(笑)。

――ライブ活動休止中はどのようにしてましたか?また今回のツアーまでに復帰出来るかの目処はたっていましたか?

Mossa
スタジオは月に2回位は入ってて新曲書いてたからあまり止まってる感じはなかった。
まぁスタジオ入っても軽く合わせてあとは殆ど話してるみたいな感じだったよ。
病気も良くなるのは分かってたけど、正直言って復帰時期がいつになるかってのは治療が上手く行くかなので何とも言えなかったけど、順調に回復して結果的には予想よりも少し早く復帰出来たから良かったよ。

――SUMMONED BY GIANTSの招集はどのような経緯で決まったのですか?

Mossa
去年の8月末にKaalaのMattから「SeattleのSubstationってライブハウスのオーナーのKenが日本に行くからタイミング合えば会って」と連絡が来たのが始り。
9月にKenが来日して1日空いてる日があって、俺の働いてるThrash Zoneに呑みに来てくれるってなって、El PuenteのオーナーのShiggyさんも呼んで3人で「日本とSeattleで交流出来たら良いね」って色々と話したんだけど、KenがSeattleに戻って暫くしてから「SBGってバンドいるんだけど一緒に日本周れる?」って連絡来てKaalaのメンバーとKenとやり取りして実現に至った。

――今年2ndアルバムのリリースも控えているようですが、どんな感じになりそうですか?

Mossa
基本的にはいつも通りのFLOATERS。ごった煮(笑)。
完成してる曲はね(笑)。
あ、歌詞はちゃんと書いてるよ(笑)。
前回のレコーディングの反省が活きてる!
まだ曲足りないから書かなきゃいけないんだけどさ。
年内には出せるようにってメンバー間では話してる。

――気が早いですが2ndアルバムリリース後の計画とかはありますか?

Mossa
アルバム出して日本各地に行きたいし、出来ればSBGと西海岸ツアーもしたいな。
去年一緒に演ったニューオリンズのCHOKEとも南部で演れたら最高だね。
まぁ先ずは今回のツアーを成功させてからだけどね(笑)。

――最後にツアーで行く各地の皆さんに一言お願いします。

Mossa
FLOATERSとしては今の編成で初めて行く街だったり、過去に行った事があっても違うライブハウスだったりで
各地のオーガナイザーさん対バンの皆さんに感謝します。
本当に皆さんの協力がなければ実現しませんでした。ありがとうございます!!

SBGと共に全力で愉しみますので皆さんも遊びに来て音と酒に酔って愉しんで貰えたらと思います。
よろしくお願いします!!

https://floatersjapan.bandcamp.com/
https://facebook.com/floaters.japan/
https://twitter.com/TxJun666

Summoned By Giants & FLOATERS JAPAN TOUR —GEMINATE OUTLAWS TOUR—

4/13(土)場所:中野MOONSTEP
Summoned by Giants
Floaters
Lifeblood
Worship Pain
Crash Syndrom
Bafomet
Mortify
Harappa

前売/当日 2,500/3,000円 + 1drink
学生(要学生証提示) 2,000円 + 1drink

4/14(日)場所:渋谷 Ruby Room
FLOATARS
Summoned By Giants(Seattle)
Khola Cosmica
ZOTHIQUE
穴虎69
Her Vomit is Modern…
Black Creek Drive
DJ ロベルト吉野

¥2000+1D
OP 1530/ST 1600

4/17(水)場所:岡山pepperland
SUMMONED BY GIANTS
FLOATERS
THE BOME STONE
TILL EWING
HOLY PISS
dios del mal

OPEN19:30 START20:00
¥2000+ drink charge¥500

4.18(木) 場所:アメリカ村 HOKAGE
Summoned By Giants (Seattle)
FLOATERS (Yokohama)
GARADAMA
The Probes

OPEN/START:19:00/19:30
前売/当日2,000yen/2,500yen (+1drink)

4/19(金) 場所:名古屋 HUCK FINN
Summoned By Giants(USA)
Floaters(西横浜)
nibs
Dethfast
Wet Bream

open/start 18:20/18:40
前売/当日¥2000+1d¥500

4/20(土)場所:長野 VENUE
Summoned By Giants (Seattle)
Floaters (東京)
GATE (栃木)
GODS OF GRIND
YxAxD
INVICTUS
DJ 平林兄弟 (ROW-GUN & Te2o)

¥2,000
OPEN 17:30 / START 18:00

4/21(日)場所:西横浜 EL PUENTE
KANDARIVAS
SERINGAI
TARING
FLOATERS
SUMMONED BY GIANTS
VERITAS CONC.75
DISASTER
SLAMMING AVOID NUTS
FUCK ON THE BEACH

[open] 15:00- [start] 15:30-
[adv] 2000yen [door] 2500yen

 

「そんな感じでFloatersはとにかくクソ野郎です!」1stアルバムをリリースしたドゥーム/スラッジ・トリオFLOATERSインタビュー!

USシアトルのドゥーム/ストーナー・バンドSUMMONED BY GIANTS来日直前インタビュー!

聞き手:梵天レコード

日本のドゥーム/スラッジ・トリオFLOATERSとの日本ツアーが控えているUSワシントン州シアトルのSUMMONED BY GIANTSインタビュー。

2015年に結成。ブラックメタル、パンクロックなど様々なジャンルの影響を受けたドゥーム/ストーナー・バンドで、これまでElderConanWitch Mountainなど国際的に知られたバンドと共演し、この度、初のジャパン・ツアーを行います。
今年1月に2ndアルバム『Azimuth』をリリース。Neighborhood of Ballardで録音されたサウンドは重いグルーブからブレイクダウン、ギターソロなど彼等の懐の深さが伺えます。同アルバムのマスタリングを手掛けたのは、NIRVANASOUNDGARDEN、最近ではHIGH ON FIREWINDHANDの作品のプロデュース等でも知られるJack Endino。

ジャパン・ツアーは4月13日土曜日からスタートです。

――時間を取っていただきありがとうございます。まず最初にSUMMONED BY GIANTSの歴史を教えてください。

活動を開始したのは2014年の後半。JordoとPatrickがやっていたEntmootというツイン・ベースのプロジェクトが自然消滅して、SeanはPouchというバンドでギターをプレイしていたんだけど、ドラムをやりたいと思っていた。その時、僕らは3ピースだった。その後、Seanがギターに戻りたがった。スネアで拳を傷め続けていたからね。いつもショウの後はそこら中血まみれになっていたよ。僕たちはLion Pincherという他のプロジェクトにいたMelを加入させて、Lion Pincherの曲をSBGでやるようになった。

――バンド名の意味、由来を教えてください。

Jordoが「指輪物語」の大ファンでね。木々が戯れている(編注:エントのことかな?)のと関連がある。僕らみんなその名前が気に入っているよ。

――今年1月にアルバム『Azimuth』をリリースされましたね。アルバムはどこでレコーディングしたのですか?レコーディング・プロセスはどのようなものでしたか?

2018年の5月にシアトルにあるSoundhouse Studioでレコーディングを始めた。エンジニアを務めてくれたのは僕らの友人でもあるMikel Perkins。レコーディングとミックスに5日ほど掛かった。初日に全曲を5、6テイク録って、細かな手直しと編集をした。丸2日掛けてミックスと、Jack Endinoのアレイ・アンプを使ってオーヴァーダブをした。そのうちのひとつはKurt Cobain(NIRVANA)が使っていたかもしれないものだよ。僕らの作業が終わった後に、Mikelが数週間掛けてミックスを仕上げた。彼はとても時間を掛けてパーフェクトに仕上げたがっていた。その後、同じスタジオでマスタリングをして、1月21日、皆既月食の夜にリリースした。

――SBGはドゥーム/ストーナーと形容、カテゴライズされていますが、アルバムを聴くととてもバラエティ豊かな音楽性ですよね。ご自分ではどう思っていますか?

人に僕らのサウンドをひとつのジャンル、カテゴリーで説明するのは難しい。というか、基本的には不可能だよ。僕らはメタル・バンドだけど、グルーヴィな曲もある。パンク、ブルースの曲もあるし、デザートロック風の曲もある。ツアーでプレイしている最近の曲は間違いなくドゥームだよ。Jordoはエピックなストーナー・リフを切り札に隠し持っているしね。メンバー全員作曲をするし、みんなの膨大な音楽性を楽しんでいるよ。それに僕ら皆、異なる地域の出身なんだ。Jordoはボストン、Seanはミシガン、MelはワシントンDCで、Patrickはシアトルの出身だ。SBGにはメンバーの育った地域の影響が間違いなく反映されている。僕らはワンパターンになったり、特定の作曲方法に縛られてしまいたくないんだ。そうすれば決して退屈しない。僕らがバンドとは何かを常に見直していくことができれば、望む方向へ進むことができるんだ。

――Floatersとの日本ツアーが控えていますが、彼らのことは知っていますか?また知っている日本のバンドはいますか?

Kaalaというサイトを運営している友人のMattが、レコーディングが終わったら短いツアーをやってみないかって尋ねてきた。彼がFloatersと僕らをつないだんだ。その後、彼らのサウンドを聴いてみたら、ツアーの相手として完璧なマッチングだと思った。僕ら皆、彼らの曲を気に入っているし、一緒にプレイできることにエキサイトしているよ。

アメリカで生まれ育った者として、勿論Borisは大好きだ。それからSIGHETERNAL ELYSIUMNOCTURNAL BLOODLUSTも好きだね。今回のツアーで共演するバンド達からサプライズを受けることを願っているよ。

――SBGのライブはどのようなものですか?

ラウド、ブ厚いリフ。ノイジーでカオティックでに思えるかもしれないけど、その後すぐに止まる。僕らの音楽は感情の大きな起伏を通過して、君たちの目の前に届く。Seanのギター・サウンドは絶えず変化し、あらゆる異なった形へと姿を変える。Patrickは最近動きが激しいから終わる頃にはバーの裏側でプレイしているかもね。僕らは永遠に続けていられるような、ビッグなアウトロが好きなんだ。

――日本で楽しみにしていることはありますか?

アメリカを離れるのはいい気晴らしになるよ。人類史上最も愚かな時代を迎えた国から離れて、気分を一新する。飛び出して今までとは違った人生を歩んでみることこそ、僕らに必要としていることだ。一緒にプレイし始めた頃からツアーに出ることを夢見ていたんだ。僕らがここで愛していることを日本で行うというアイディアに圧倒されているよ。僕ら皆、ギター・ストアへ行って、アメリカでは手に入らない新しいペダルをたくさん試してみたいんだ。SeanとMelは日本人の家族がいるから、彼らは家族に会えることを喜んでいるよ。

Patrickは任●堂で働いていたんだけど、面倒なヤツだったからクビになっちゃってね。きっと本社に凸りたいんじゃないかな。彼は超オタクで、格闘ゲームがホットな場所へ行って地元の人たちに挑戦したがっているよ。

――最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

君たちの前でプレイできる機会を与えてくれてありがとう。一生懸命にプレイするから、来てくれたら失望はさせないよ。君たちも全力でぶつかってきてくれ。そうすれば僕らのシアトルにいる友達全員に日本でプレイする必要があるって知らせられるからね。

https://www.facebook.com/SummonedbyGiants
https://summonedbygiants.bandcamp.com/

Summoned By Giants & FLOATERS JAPAN TOUR —GEMINATE OUTLAWS TOUR—

4/13(土)場所:中野MOONSTEP
Summoned by Giants
Floaters
Lifeblood
Worship Pain
Crash Syndrom
Bafomet
Mortify
Harappa

前売/当日 2,500/3,000円 + 1drink
学生(要学生証提示) 2,000円 + 1drink

4/14(日)場所:渋谷 Ruby Room
FLOATARS
Summoned By Giants(Seattle)
Khola Cosmica
ZOTHIQUE
穴虎69
Her Vomit is Modern…
Black Creek Drive
DJ ロベルト吉野

¥2000+1D
OP 1530/ST 1600

4/17(水)場所:岡山pepperland
SUMMONED BY GIANTS
FLOATERS
THE BOME STONE
TILL EWING
HOLY PISS
dios del mal

OPEN19:30 START20:00
¥2000+ drink charge¥500

4.18(木) 場所:アメリカ村 HOKAGE
Summoned By Giants (Seattle)
FLOATERS (Yokohama)
GARADAMA
The Probes

OPEN/START:19:00/19:30
前売/当日2,000yen/2,500yen (+1drink)

4/19(金) 場所:名古屋 HUCK FINN
Summoned By Giants(USA)
Floaters(西横浜)
nibs
Dethfast
Wet Bream

open/start 18:20/18:40
前売/当日¥2000+1d¥500

4/20(土)場所:長野 VENUE
Summoned By Giants (Seattle)
Floaters (東京)
GATE (栃木)
GODS OF GRIND
YxAxD
INVICTUS
DJ 平林兄弟 (ROW-GUN & Te2o)

¥2,000
OPEN 17:30 / START 18:00

4/21(日)場所:西横浜 EL PUENTE
KANDARIVAS
SERINGAI
TARING
FLOATERS
SUMMONED BY GIANTS
VERITAS CONC.75
DISASTER
SLAMMING AVOID NUTS
FUCK ON THE BEACH

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「そんな感じでFloatersはとにかくクソ野郎です!」1stアルバムをリリースしたドゥーム/スラッジ・トリオFLOATERSインタビュー!

[:ja]聞き手:梵天レコード
2017年11月26日 関内Thrashzone Meatballsにて

昨年12月に1stアルバム”Waiting For Amnesty”をCaprured Recordsからリリースしたトリオ、Floaters。↑の写真から想像できる通りのアウトロー・ドゥーム、スラッジは、労働終わりの1杯のように五臓六腑に染み渡る無骨、燻し銀、そして珠玉の1枚に仕上がっています。

Bass/VocalのMossa氏が勤める関内Thrashzone Meatballsで、自家製クラフトビールを飲みつつインタビューして参りました。

 

――結成の経緯から教えてください。

Junichi Ohashi(Drums)
2013年に。その時はまだモッサはいなかったんだけど、最初は俺とTanakaと、あとトッツ(Vocals)っていう・・・もういないんだけど(苦笑)。その3人でやるってことになって、ベース探そうって地元の知り合いでベース弾けるヤツいないかって探したら、モトイってやつがいて。で、4人でやっていって、いちばん最初のライブが小岩Bushbashで、対バンがInside Charmer

Mossa Hiro (Bass/Voice)
Junとは昔、Redwood Bluesで一緒だったんだよね。

Jun
ブッキングお願いしますってBushbash行った時に、対バン見たらInside Charmer。ここで会うとは・・・(笑)。

――そこでRedwood以来の再会ですか?

Mossa
何度かライブハウスで会ってはいたけど、久しぶりって感じだよね。5年とか6年ぶりぐらい。相変わらずだったけど。トッツもJunと知り合った時から知ってて俺が入ったのは2014年の秋ぐらいで、トッツの結婚式の二次会がデビュー戦(笑)。11月にデモ録って。Inside CharmerとFloatersでやりつつ、Nepenthesにも入って、バタバタしている間にヴォーカルのトッツが辞めるだ辞めないだ、三か月休ませてくれとかになって(苦笑)その間に止まってるのもなんだから3人で何かやる?って感じで・・・2回ぐらいやったんだっけ?

Yu Tanaka(Guitars)
いや、1回だけ(笑)。

Mossa
Floaters Lite(笑)。あのライブ色々あったよね(笑)
ライブ中に衝撃的な事があって最後の曲の頭のリフが飛んだもん(笑)

Tanaka
「なんだっけ?なんだっけ?」って(笑)。

――リフを忘れるほどの(笑)。

Mossa
衝撃的過ぎ(笑)そのあとプエンテの企画で岡山と大阪のツアーがあって、トッツはそこで結局辞めるってなった。西横浜El Puenteの周年イベントが決まってたんだけど、それも出れないっていうことで、じゃあとりあえず俺歌うわってことで。結局スタジオ入れなかったんだよね。バンドもこの後どうなるかわからないけど、とりあえずこの日は絶対やるからってなって・・・それがすこぶる良くて(笑)。終わって珍しくギターのYuさんが「どうしますか?これから」って。で俺が2人に「どう?」っ聞いたら、みんな手ごたえがあったからやろうと(笑)

Tanaka
それが去年の7月ぐらい。

Mossa
春ぐらいにはアルバム出したいねってなってたんだけど、俺が仕事とか忙しくて。やっと9~10月で録れてなんとか年内発売にこぎつけた感じ。スタジオ入って、じゃあ曲を書こう、何かアイディアある?って聞いたら、みんな携帯からゴソゴソやって(笑)、その場で曲を書いていくスタイル。俺が忙しくてスタジオ入る時間的余裕が無くて最後の方は俺とYuで2曲ずつぐらい書こうって。バンドで合わせて少し変更して。結構突貫工事だった。歌も超ギリギリだったよ。

Jun
俺らもレコーディングで初めて(歌を)聴いた(笑)。

Mossa
初日と2日目の途中まででオケ録って、ギター重ねてる時に仮で歌って、こういう感じかって。それまでリハとライブでしか歌ったことなかったから、どんな感じなのか確かめたくて。録音2日目のギター重ねてる時に俺は仕事に行かなきゃいけなかったから抜けて仕事に行ってリードとかは入れてもらってた。歌は10日後ぐらいに2人が仕事してる日の昼くらいから1人でVoid Lab)))に行って録った。早く終わってよかったよね。

“Waiting For Amnesty” (2017)

 

――HiroさんのヴォーカルはInside Charmerで聴いてたんで、ああいう感じかと思ってたんですが、全然違いましたね。こういう歌い方もするんだって。

Mossa
歌は特にまだまだ足りないからかなり頑張らないとなって感じ(笑)

――一足先にアルバム聴かせていただいたんですが、90年代スラッジ/ドゥームの影響を強く感じました。ちょうど90年代のバンドいろいろ聴いてたところだったからかもしれませんが。その辺みなさん直撃世代ですよね?

Mossa
まあね。俺達生まれたのが77年から79年ぐらいだから、90年代前半が高校生だね。

――当時こういう音楽聴いた時の印象ってどうでした?

Jun
俺はやっぱりEyehategodだね。全然知らなかったけどディスクユニオンに行って。当時ジャケ買いが自分の中で流行っていて、「Take As Needed For Pain」を。最初うーんって思ったんだけど、日が経つにつれ「カッケエ!」って。

Mossa
俺はSpiritual Beggars、Cathedralとかが衝撃だった。Inside CharmerもRedwood BluesもSpiritual Beggarsの曲からだし(笑)。あとRise Above系。

――ドゥームやスラッジと呼ばれることに対してはどうですか?

Mossa
元々好きだし(笑)。

Jun
客が観てそう判断してくれるなら。

Mossa
ドゥームやりたいと言うよりはカッコ良いと思った事をやりたい。これはバンドやってる人は全員そうでしょ。このジャンルやりたいってのもあるだろうけどカッコ良いと思った事をやってるだけでしょ。うちはそれがドゥーム、スラッジになっていると言うか。3人で曲書いたりしてる時に、自分では思い付かないようなアイディアがメンバーから出てきて試してみたら「おー、かっこいい」みたいな事もよくあるし。Inside Charmer、Redwood Bluesでは曲書き上げてからバンドでやってたけどFloatersはそうじゃない。結局カッコよければいいでしょ、っていう。この曲ここで終わるの!?みたいなとか、この変拍子何!?とかよくあるのがFloatersな感じ。

Tanaka
俺はドゥーム、スラッジのつもりはない(笑)。

Mossa
(Yuは)当時から聴いてたわけじゃないからね。Yuはもうちょっとメタルっぽいのが好きだから。

Jun
俺は元ヘルボトムだしね。

Mossa
ドゥーム、スラッジだわな(笑)。JunはGunship 666の元ドラムでもあって ベースのモトイ君が辞めた時に俺ともうひとり候補がいたんだよ(笑)。

Jun
最初にパッと思い浮かんだのはKhola CosmicaのKensuke。

Mossa
もともとKensukeは(JunとGunship666で)一緒なんだよ。ヘルボトムもやってたし。ヘルボトムは現GuevnnaのGoもやってたし、Khola Cosmicaのザックもいたし。

Jun
ヘルボトムはすごいよね。

Mossa
ヘルボトムの時に初めて皆と会ったんだけど新宿URGAでRedwood Bluesで対バンだったんだけど、職安通り歩いてたら前からすげえヒゲのヤツが来るの。(ライブを)見たら超良くて(笑)。Redwood Bluesのドラムが抜けた時にJunに連絡したけど「今はできない」って言われて。前の二万電圧の何かのイベント出た時、サポートドラムが見付からなくてRedwoodのギターヴォーカルがドラム・ヴォーカルやるって言ってベースとドラムの編成でやったんだけど、それ見たJunが「やべえ、俺やる」って。

Jun
十数年前だね。

――皆さん旧知の仲なんですね。

Mossa
ここ(JunとMossa)はそうだね。ここ(YuとJun)もGunshipのライブの時とかに行ってるから、みんな一緒の場所にはいたんだろうな。

――歌詞を書いてるのは?

Mossa
俺が頑張って書いてる(笑)。元々ヴォーカリストじゃないから大変・・・Inside Charmerで初めて書くようになったんだけど歌詞は一番最後に作る。録音しなきゃいけなくなったら歌詞を書かなきゃいけなくなって、それに伴いメロディを変えるってどんどんやる事が出てくるっていう(笑)

――今回歌詞カードは・・・?

Mossa
歌詞カードはありません(笑)

Tanaka
俺らも歌詞の内容は知りません(笑)。

Mossa
とりあえず全部ダメな奴の話・・・まぁ自分の話だね(笑)7曲目は酒を飲み過ぎて道を失ってる話。歌詞自体は長かったんだけど削って、サビの「聖なるホップの山を登ろう」しか歌ってない(笑)。

Tanaka
それは知ってるよ(笑)。

Mossa
Holy Hop Mountainにしようと思ったんだけど、それはちょっとやり過ぎかと(笑)。

――曲のタイトルにはzealot(狂信者)、Iconoclast(偶像破壊者)とか宗教的な言葉がありますが・・・

Mossa
Iconoclastは使わなければならなかった(笑)最後の曲”Most EXtreme ICOnoclast”は俺らの中でメキシコって呼ばれてる曲で。

Tanaka
出来た時にメキシコって呼んでて。

Mossa
だからMEXICOの文字だけ大文字にしてるの。メキシコありきで言葉を選んだ。

――”Most EXtreme ICOnoclast”は後半がIron Maidenみたいで。

Mossa
あの部分は俺達が馬に乗ってメキシコに逃げる西部劇なの(笑)。歌詞の内容は全然違うけど(笑)

――”Waiting For Amnesty”というアルバムのタイトルの由来は?

Mossa
これもYuのアイディアでメキシコから繋がってる。何故俺たちが国境を越えてメキシコに逃げなくてはいけないのか、Floaters(クソ野郎)だからこれしかできませんって感じで「これで赦して!」っていう。恩赦(Amnesty)が欲しい。

Tanaka
最後の曲の最後のパートは無かったんですけど合わせてる時に、このリズムで。西部劇の感じはずっとやりたくて。

Mossa
ギャロップな感じは確かにIron Maidenっぽいんだけど、おれたちの中では西部劇。夕日に向かって走るやつ(笑)

Tanaka
国境に向かって走ってる(笑)。日本語で恩赦っていうイメージだけ浮かんで語感の良さで。

Mossa
「Pardon letterじゃ締まんないな・・・Amnestyで」ってスタジオで決まった。

――アルバム通してのコンセプトがある、とかではないんですね。

Mossa
そういうのではない(笑)。

Tanaka
内容はちゃんとわかってないですけど、大体Hiroさんの言葉というか。

Mossa
俺の思ってること、感じてることとか。あることないこと膨らませて(笑)。なので駄目な奴の話ばかりなの(笑)

Tanaka
1曲、歌詞が全く決まってなくて、じゃあタイトルだけつけていいですか?って「狂信者の願い」ってつけさせてもらって、これで膨らませてくださいって。

――タイトルだけ見ると色々深読みできそうですね。

Tanaka
あと1曲だけすごい感情的な・・・。

Mossa  
ハハハハ

――Get Back My Soulはもしかして曲もHiroさんですか?

Mossa
そう(笑)。Floatersっぽくないのを、アルバムが一本調子にならないように違うヤツを入れたいっていうのがあって書いた。もうちょっと短かくしたかったんだけど長かったね(笑)。あともう1曲 1人で書いてる。

Tanaka
3曲ジャムで、1曲は4人時代の曲のリアレンジで、残りの4曲をそれぞれで(TanakaとMossa)。

――デモのトレイラー動画は映画ネタでしたね。

Jun
B級ホラーとかその辺好きだから。

――先ほど言ってた西部劇も元ネタあったりするんですか?

Tanaka
元ネタというかクリント・イーストウッドがとにかく好きで。あの人はいるだけで絵になる。

Jun
俺は西部劇といったらジョン・ウェインだな。ミスター西部劇。

――機材や音作りに関してはどうですか?

Jun
機材に関してこだわりがあるのはこの二人だね。

Mossa
こだわりは、見た目が馬鹿馬鹿しい(笑)。あとはネーミングがアホとか。ダンウィッチ・アンプのウィザーズ・ファズだよ?見たことある人はわかると思うけど、魔法使いの絵が描いてあって、杖の先がONにすると緑に光る(笑)。あとエグく歪む。下手になるから考えた方がいいって言われたけどね。もうちょっとローエンドは欲しい。まだ足りない。

Tanaka
ギターは・・・抜けにくいのはありますよね。

Mossa
この手の音楽やってりゃ抜けにくいのはついて回るよね。

Tanaka
ベースが歪んでるってのもあるし。おれもハイ寄りのキンキンした音が好きじゃないから。

Mossa
二人とも音の好みが下の方に寄ってる。

Tanaka
ギリギリ抜けるところまでしかハイを上げないっていう。今回ギターはすごく気に入った音で録れましたね。

Mossa
ベース単体でも、歪んだところのギャリッっていうところは出したいけど、バキッっていうのとも違うしなっていう・・・。アイスクリームを揚げたみたいな音(笑)外はカリっと中はトロっとじゃないけど(笑)とりあえず馬鹿みたいなローエンドと、馬鹿みたいな歪みは欲しい(笑)。「頭悪いんだなコイツ」っていうぐらいのが欲しい。

Tanaka
録音はいい感じで録れてる。ほとんど手を加えてない、Orangeの一番カッコいい音が出たかな。

Mossa
ベースはキャビがローエンドを再生しきれない感じだったから出したい所を言ってローエンド足すようにイコライジングとかした。それやるとギターが霞むんじゃないかって皆言うけど、帯域違うし、下出した方がガッツのある音になると思ったから。

Tanaka
もっと埋もれると思ったけど全然埋もれなかった。

Mossa
アルバム録る時に、どんな音にしたい?って他のメンバーに聞いたの。そしたら特にレスポンスが無い(笑)。

Tanaka
だって、無いよ!

Jun
俺は粘り気がある音。粘りを求めて始めたから。

Mossa
音に対してそこまでどうこうしたいってのは言わなかったけど、思ったとおりになったな、ってぐらいで。

――そこはバンド内である程度、共通認識がみたいなものがあって。

Jun
俺はBilly Andersonのドラムの音が大好きで。

Mossa
そこは間違いなく良いから!っていう共通認識だね。ちょっと録って聴いてを繰り返して、こうしようっていうので決めた音。録った後にミックスの時点で、もっとこういう感じっていうのもしたし。歌に関してはさっぱりわからねえから(笑)、最初、素で録って、よくわかんない(笑)。ちょっと歪ませる?定位を広くする?ぐらいしか言ってない(笑)。

Tanaka
歪ませてるんですか?

Mossa
歪むギリギリ前のところ。頭打ってるみたいな感じを出した。それを自分の喉でもっとダーティにできればいいんだけど。気持ちダーティな感じを出したいってところで機械に頼った(笑)。

――アルバムのリリースはどんな経緯で?

Mossa
今回Captured Recordsで出させてもらうのは、Inside Charmerの時からJeroさんに声掛けられてて。まず2017年の総武線バイオレンスは(Floatersで)こっちから先に出たいって言って出させて貰う事になって。何ヶ月後かにJeroさん(Abigail、Captured Records)がプエンテに来た時に話をして、録ろうと思ってるんですよって話したら「うちからどう?」ってことで。

–アートワークは誰のものですか?

Mossa
プエンテ繋がりで今ニューヨークのブルックリンで活躍してる岡野真人さんにお願いして描いてもらった。太平洋を挟んでコラボレーション(笑)真人さんにはNoothgrushとの日本ツアーのフライヤーも描いて貰ってて真人さんしか居ないでしょと。オケ録ったのを送ってそれを聴きながら描き始めてくれて途中で歌も載せたのも送って描きあげてくれた。

――ベタな質問ですが、人生を変えたアルバム5枚を教えてください。

Mossa
Black Sabbath – Black Sabbath、Spiritual Beggars – Mantra III、The Wildhearts のB面の曲がいっぱい入ってるベスト盤、The Beatles – Let it beあとCathedral  – Endtyme

Tanaka
PanteraのVulgar、OzzyのBlizzard of Ozz、David BowieのZiggy Stardust、ZeppelinのIIかIV。最近の俺に影響与えたってなるとDOWNのNoLa。

Jun
G.I.S.M.、DEATH SIDE、LYNYRD SKYNYRD、EYEHATEGOD、PANTERA。

Mossa
俺達メタル、ドゥーム、ハードコア、みたいな(笑)。

――すごい腑に落ちる感じが(笑)。ハードコアっぽいパートがあるのはJunさんで、メタルっぽいところはYuさん、ドゥームはMossaさんで。

Mossa
ハードコアのエッジもあって、メタリックな刻みのリフもあったりするし。そこがらしいな、と思う。メンバーそれぞれの特徴がパート、パートで出てるのがFloatersのいいところかな。

Tanaka
いろんなのがミックスされたバンドがいいと思うんですけどね。

Mossa
別に新しいジャンルを作ろうとは思ってない。ただ自分達なりのカッコいいことをやりたい。

Tanaka
もう完成されていると思うからね、カッコいいジャンルは。

Mossa
あとはどれだけ自分で納得できるものを生み出せるか、それが大事かな。

Tanaka
現場でカッコいいのを俺たちがやらないと残らないかなって。

Jun
若いやつにがんばって欲しいけどね。

Mossa
どこも同じこと言うだろうけど、うちらもカッコいいことやりたいだけ。じゃないとやってられないよ。恩赦もらうためにやってるんだから(笑)。「あなたの恩赦、待ってます」だからね(笑)。

Tanaka
「あなたの恩赦、待ってます」キャンペーンやろうか(笑)。トッツの顔写真Tシャツをプレゼント(笑)。

Jun
ヒゲの長さキャンペーンとかね。Hiroさんと俺のヒゲの長さ足して、それより長い奴は入場無料。

Tanaka
なかなかいねぇだろうなあ(笑)。来たら面白いけど。

――ライブとかツアーの面白いエピソードが多そうですが、言える範囲で何かありましたら教えてください。

Tanaka
トッツが2回バックれたことある(笑)。

Mossa
面白かったのは彦根かな。ライブ終って対バンの人達は打ち上げ行っちゃって俺達は疲れたからハコで寝るってなったの。ケータリングがあったから食べていいって言われてて、酒も生ビール以外は飲んでいいって言われてたけどメンバー3人は直ぐに寝ちゃって俺は起きてたから何か食いながら酒開け始めたらいきなり、「Hiroさん、打ち上げ行かないの~?」って寝てる筈のトッツがいきなり言ってきたんだよ。あいつ寝たふりしてやがってたの(笑)。トッツと二人で飲み始めて、飲み終わった缶をカウンターに並べてって朝5時ぐらいにJunとYuも起きてきて、残り数本だったから「全部飲んでくれ」って。

Tanaka
起きていきなり「ビール飲めよ」って(笑)。

Mossa
全部飲み終えたところに主催者が返ってきたから寝たふりしてたら「Floatersもう絶対呼ばねえ!」って(笑)。

Tanaka
ロクなことねえよ、あそこ(笑)。

Mossa
Floatersは寝たふり事件多いよね(笑)。あと2つはTanakaとJunが俺に対してそれぞれ(笑)でもこれは流石に言えないなぁ(笑)。人から観たFloatersってどんな感じなんだろ?

――サグいというかアウトロー感ありますね。

Mossa
悪ふざけしかしないけどね(笑)

Tanaka
MCあんまやらないし・・・ヘラヘラしてるだけだし(笑)。もっとカッコつけた方がいいのかな。

Mossa
話すと「なんかすいません」みたいな感じになっちゃうから・・・もっとワルイ感じで、「地獄へ落ちろ!」とかやった方がいいのかな(笑)。

――それ、Redwood Bluesじゃないですか(笑)。

Mossa
マイチョ(My Choice、Redwood BluesのVocals/Guitars)にMC担当で入ってもらうか(笑)。

Jun
Hiroさん口パクでね。

――聞こえ悪かったらアレですけど、Floatersは労働者階級のロックって感じもします。

Jun
まさしくそう。

Tanaka
イメージしてる感じもあるよね、うちら。

Mossa
俺たちは糞だからね。バンド名からしてそうだし。Matt(Kaala)がこの前、日本に戻ってきた時、「なんでFloatersって名前なの?」って聞かれて、だって俺達クソだからって。

Jun
Alpacaにも「どういう意味なんだ?」って聞かれたんだよね。便器に浮かんでるクソだって言ったら「ウオー!!!」って(笑)。

Tanaka
それは後からだよね。最初は浮いてるやつ、浮世離れとか。

Jun
でもFloatersで検索すると便器にウンコが浮かんでる画像とかいっぱい出てくるよ。

――不思議ちゃんって意味もあるみたいですね。

Mossa
スクールカーストのね。おれたち不思議ちゃんだから(笑)。

Jun
俺も不思議ちゃんだなあ。

Tanaka
その発言やばいよ(笑)。

Mossa
こいつ(Jun)は不思議ちゃんと言うかヒドいよ。無茶苦茶だよ。

Jun
コンビニで悪さしたら警察に捕まって、身体検査されたら大麻が出てきて・・・。で、1カ月ぐらい入ってたのかな。固い椅子があるの。それに3時間ぐらい座らされて聴取された。その時、ちょうど知り合いも捕まってて、久しぶり!みたいな。「俺はガサ入れでさ~」とか。

――やっぱりサグいじゃないですか!

Mossa
こいつはサグ担当だよ(笑)。こいつとトッツはマジでヤバい。

Jun
何回捕まったことか・・・。ダイムバッグ・ダレルが死んだ時に、六本木にダレルの顔写真のポスターを張りまくったら警察に捕まって。

――(笑)。いい話ですね!

Mossa
結婚して落ち着いた感じ?

Jun
そうだね。結婚してなかったら相当ヤバい感じに・・・。

Mossa
そんな感じでFloatersはとにかくクソ野郎です!

――今の時代、そういうのが忌避されるというか。そういうノリ好きな人多いと思うんすけどね。

Mossa
Floatersはそういうネタいっぱいあるからね(笑)。

――なんか、いい空気ですね、バンドとして。

Mossa
うん、そうだね(笑)

――今後の予定などありましたら教えてください。

Mossa
発売して最初のライブは総武線バイオレンス。そのあと都内はRubyroomでフリーギグが1月29日。うちの主催は2月4日にEl Puenteで。

Tanaka
今後、力暴力(ちからぼうりょく)バンドをやります。

Mossa
プエンテのスタッフのパンキュさんと(笑)

Floatersライブ・インフォメーション
01/27 福生Chicken Shack
01/29 渋谷Rubyroom
02/04 西横浜El Puente(レコ発企画)
02/15 西横浜El Puente
02/23 西横浜El Puente
03/10 西横浜El Puente

https://floatersjapan.bandcamp.com/
https://facebook.com/floaters.japan/
https://twitter.com/TxJun666[:]

「そういう意味じゃ間違いなく“男”を知ってるんですけど……」”男の中の男” 山本竜二 インタビュー

2011年 写真:川保天骨 インタビュー:オルタナビジョン


山本竜二は知る人ぞ知る伝説の男優だ。アラカンこと嵐寛寿郎の甥っこという俳優としてはサラブレットの血筋にありながら、ピンク映画、AVの世界に飛び込み、しかも、ホモに熟女に果てはニワトリともファック! 極めつけは汚物にも手を出すという、はたから見ていると狂気の行動としか見えないことを飄々とこなす。
その一方、役者としてはNHK大河ドラマに出演するなど陽のあたる道も堂々と歩んでいる。一体どうやったらそんなことができるのだろうか? この男の底知れない生命力はどこから湧き出てくるのであろうか? 天国と地獄を軽々と行き来する山本竜二の生き様に迫る!
※このインタビューは、ペキンパー第弐号に収録されたものをPECKINPAH DIGITAL掲載用に編集したものです。

竜二
今日はどんな取材なんですか?

──この本のテーマは「男の中の男」なんですが、そうなるとやっぱり竜二さんを外すわけにはいかないと思うんですね。

竜二
僕が男の中の男!? まあ、僕はホモ映画も撮りましたからね(苦笑)。

──まさに“男の中の男”だと(笑)。

竜二
入れて入れられ、ね。そういう意味じゃ間違いなく“男”を知ってるんですけどそういうことじゃないでしょ?

──どん底の中でいかにシノいできたかという部分ですね。なにしろ、竜二さんの場合、京都・太秦の大部屋俳優からポルノ俳優になって、その後AVで有名になるわけですけど、かなり特殊なジャンルで名を挙げましたからね。しかも、その一方で一昨年はNHKの大河ドラマ「篤姫」にも出演してるという、振り幅の大きさが凄いんですよ。

竜二
この前はね、NHKのラジオドラマで徳川家康役をやりました(照)。

──ホント凄い落差ですよね。特に竜二さんの場合、ジャンルがジャンルでしたからね。

竜二
そうそう。普通AV男優っていったら相手は女でしょ。しかもキレイな女の人。でも、僕は女優さんだけと違いますからね。男ともやったしね、お婆ちゃんともやった、あとはニワトリともやりましたよ。そんなんばっかですよ(笑)。

──ニワトリとのファックはいまや伝説ですからね。

竜二
あれは20年以上前になりますけど、業界で有名な某AVメーカーがあるんですよ。そこと仕事することになって待ち合わせの場所に行ったらメーカーの社長さんがいるだけでスタッフがいないんです。「スタッフはどうしたんですか」って聞いたら、社長さんが「大丈夫です、私が全部出来ますから」なんていうんで車に乗り込んだら、スタッフはまだいいとしても女の子までいないわけですよ。「すいません、女の子はあとから来るんですか?」「いいえ、今日の山本君の相手はすでに後ろにいるんです」っていうんですね。でも、後ろの席を見ても誰もいないんですよ。

──おかしな話ですよね。

竜二
ただ箱がひとつ置いてあって、コトコト動いてるだけ。耳をすますとコッコッコッて鳴いてるんですよ。「えっ!」と思って社長の顔を見たらニヤっと笑って「そうです! 今日の竜二さんの相手はニワトリです。ニワトリを女だと思ってレイプしてください!」って(笑)。

──いきなり無茶苦茶を言いますね(笑)。

竜二
それで現場が富士の樹海になって、「いいですか、代わりがいませんからね、逃さないでください。じゃあ、襲って、スタート! ああダメダメ、カット、NG!」とかいって怒るんですよ。「山本君、私はさっき言ったじゃないですか、女を襲うように襲うんですよ。それじゃあ、どう見てもニワトリを虐めてるようにしか見えません!」って(笑)。

──いや、だって(苦笑)。

竜二
そう。だってニワトリを虐めてるだけですからね(笑)。そう言ったら社長も「仕方ないですねえ、じゃあ、もうそろそろレイプしてください!」っていうんで「どこにオメコがあるのかわかりません」「しょうがないですねえ、じゃあ、やってるふりでいいですよ、擬似で!」なんて話をしてたんですけど、その時にハッと気がついたんですよ。そのニワトリ、よく見たら立派なトサカがある。オスだったんですよね(苦笑)。

──人選ミスをしていたと(笑)。

竜二
トリのトリ違い(苦笑)。それでなんとか射精シーンを撮って終わりかなって思ったら、「じゃあ、最後にニワトリの首をはねて殺してください」っていうんですよ。「いや、そんなこと僕やったことないですよ」って断ると「ワガママ言っちゃダメです! 私はあなたを一日買ってるんですからね、言ったとおりにやってください!」ってまた怒る。それで、包丁でニワトリの首を切ったんですけど、ああいう時って遠慮したらダメですね、首が半分だけ切れてかえって可哀想。結局最後は手でむしりとることになっちゃったんですよぉ……。

──凄惨ですねえ。

竜二
でね、社長さんに「これはちゃんと食べましょうよ、食用で殺されるならまだしもAVで殺されたら可哀想ですよ」って言ったんですが、「あのね、そういう情けは不必要なんですよ。こんなものはいらない」ってポイって樹海に捨てちゃって(苦笑)。だから、富士の樹海には自殺者の死体だけでなく、首のないニワトリの死体も一羽確実にあります。

──これが有名なニワトリファック事件の全貌だったんですね。もう一つ、竜二さんを語る上で欠かせないのがウンコですよね。

竜二
僕は大部屋俳優出身だからイヤだっていうのが基本的にないんですよ。AVの仕事をする時も「本番するのは役者の仕事じゃない」なんていって断ったりする役者さんって多かったんですけど、僕はそんなことは一切ない。でも、その僕のなんでもやりますが逆にアダになったわけですよ(苦笑)。

──なんでもやりすぎたと(笑)。そもそもなんでウンコと関わることになったんですか?

竜二
昔、高橋樹里ちゃんというAVの女優さんとよく共演してて、撮影終わったあともよく飲みにいってたんですよ。で、ある日「竜ちゃん、ちょっと相談があんねん」と。「私、ちょっと竜ちゃんには言ってへんかったけど、スカトロのビデオ出てるのよ」「スカトロってなに?」「ウンコ」って言うから、シャレやなくてフ~ンっていうて(笑)。で、「最近そこのメーカーの社長さんが、男優さんがいなくて困ってはるんやけど、竜ちゃん、やってくれへん?」っていうわけです。まあ、僕もちょっと酔ってたからね。樹里ちゃんのことも好きやったし、「それじゃあ、その社長さんに僕の電話番号教えといて」なんていって。そしたらすぐ電話がかかってきて、「実は電話では説明しずらいんで、直接事務所に来てくれますか」と。それで事務所に行ったら今度は「口でも説明しずらいんでこのビデオを見てください」って言うわけですよ。

──なんか怖いですね(笑)。

竜二
怖いですよ?(笑)。だってモニターにはいきなり女の子のお尻のアップが映しだされましたからね。で、しばらくすると肛門がグーッと下がってきてポコッとウンコの先が出てくる。それがグーンと出てきてポトッと落ちると、カメラマンも慣れたもので、その落ちるウンコを追っかけてパーンダウンするんですよ(笑)。

──プロの仕事ですね。

竜二
素晴らしいですよ。でもね、次の瞬間、そのウンコは下にいたおじさんの口の中にパクッと入っちゃったんですね。そこで社長さんがピッとビデオを止めて「山本さん、この男優が最近いなくなりました」と(笑)。

──ワハハハ! 厳しいオファーですね。
竜二
僕はどうしようかなと。「ちょっとだけ考えさせてください」と言ってその日は帰ったんですね。

──考える余地があるのが凄いんですけど(苦笑)。

竜二
いや、だから、ピンク映画の先輩の池島ゆたかっていう役者に相談したんですよ。そしたら池さんが「役者はな、なんでも経験なんだよ。滅多にウンコなんか食うチャンスなんかないんだからやったほうがいい」って。僕も「これは役者の肥やしになりますね、言葉通りに」なんてシャレをいいながらやることにしたんですね(苦笑)。

──つまり、あんまり抵抗なかったと。

竜二
いやいや、最初は顔になすりつけたり、口に入れたりからですけど。

──いやいや、最初からもうそこまでやってるんですか!ってレベルなんですけど(苦笑)。慣らし運転みたいなことは一切しなかったんですか?

竜二
ないない。僕が社長さんにいうたのは、無理やり女の子にウンコを出さしてるビデオじゃなくて、やってるもん同士は「僕たち楽しいんです」っていうものにしたかったんですよ。第三者が見たらどんなに変態な行為であっても、やってるもんが楽しかったら救いがあるじゃないですか。それで当時『さんまのまんま』が始まったばかりで、あの形式にしようと。毎回毎回AVでご活躍されてる女優さんが、“山本竜二の部屋”に来て、お尻遊びして、最後ウンコして帰ってもらうってスタイルになったわけですよ。

──また凄い部屋を作りましたね(笑)。

竜二
ホントにこの部屋は凄くてね、カメラ3台使って撮ってたんですよ。テレビ局みたいに。
それで最後ウンコする時は、「あなたの顔を1カメが、あなたのお尻を2カメが、そして私を含めた全体像を3カメが撮っております。AV広しといえどもマルチで撮っているのはビデオインターナショナルの作品だけです!」とか言ってたんですよ。

──贅沢ですね。

竜二
贅沢なウンコでしょ。しかも売れたんですよ。アヌスシリーズっていってね、アヌスのつぶやき、アヌスのささやきとかいろんなシリーズが出来ました。そしたら、また社長から電話がかかってきて、「山本くん、売れてることは売れてるんだけど、最近ちょっと売れ行きが横ばいになってきてね。なにかアイデアないかね」ってウンコだけにもうひとひねりほしいってわけですよ(笑)。それで僕が「そうですねえ、もうウンコ食べてますしね、顔にもなすりつけてるでしょう。もう次やるとしたら、料理するぐらいしかないんじゃないですかね」っていったら、「山本くん、それだーッ! ウンコを料理しよう!!」ってことで『ウンコ3分間クッキング』っていうシリーズが増えるわけですよ(笑)。

──自分で増やしてしまったと(笑)。

竜二
最初はやっぱりウンコカレーね。次がウンコミートスパゲティ、あとはウンコ寿司。納豆巻きみたいにするの。海苔ひいて、ご飯ひいて、ウンコ置いて、よしずで巻いて、包丁で切って食べるんですよ。

──うわぁ~。

竜二
で、食べる時は北の方向を向いて食べたりするんですよ。

──恵方巻き(笑)!

竜二
幸運が来ますようにって。でも、運じゃないよ、ウンコだよって(笑)。

──身体張ったギャグですね(笑)。

竜二
そんなことをやってたら、「平凡パンチ」という雑誌がぜひ取材させてほしいと。担当は杉作J太郎さんで銀座のマガジンハウスに訪ねていったら地下の大きなスタジオに、ハリボテの巨大なウンコが作ってあって、僕が持つ用に大きなナイフとフォークも用意してある。あれは嬉しかったなあ。大部屋出身でしょ、自分のことなんて新聞や雑誌に取り上げられるなんてことがそれまでなかったんで、後生大事に残しておいたんですよ。そしたら、それを最初の嫁に見られて「あんたのやってる仕事ってこういうことなの! ポルノだけだって本当はいろいろ言いたいことがあるのにウンコ食べてるの、仕事で! 最低やな! もう私を取るか、ウンコを取るか、はっきりしてよ!」って言われてね(苦笑)。

──そんな選択でいいのかと思いますよね(苦笑)。

竜二
だってウンコは排泄物だよ、自分と排泄物を天秤にかけてどうするのと。「でも、あなたはウンコがそのぐらい好きなんでしょ」って言うから「好きでやってるわけじゃないよ」って言ったんですけど、結局離婚することになったんでウンコ取っちゃった結果になったんですよ(苦笑)。

──切ない話ですねえ。

竜二
ともかく嫁バレした時点でウンコの仕事は辞めたんですね。そしたら歌舞伎町を歩いてる時にいきなり「山本竜二さんですよね、生きてたんですか?」って言われたんですよ。「なんですか、生きてますよ」「いや、我々の間では山本竜二さんは死んだことになってます」っていうから「我々ってなんですか?」「僕らはウンコマニアなんです」って(笑)。彼らはウンコビデオしか見ないから、急に僕が出なくなったんで、ウンコの食べ過ぎで死んだんだって思ってたみたいなんですよ。「良かった、仲間に言っときます。ウンコ食べても全然大丈夫なんだ」って。「なんだよ、心配してたのはそっちかよ」っていう(苦笑)。

──本当に面白い人生を生きてますね(笑)。ところで、ひとつ質問があるんですけど、普通ウンコを食べませんかってオファーがきても、なかなか引き受けないと思うんですけど。

竜二
ふふふふ。これはね、太秦で、食えへん時にね、スタントマンみたいなことをやってたんでね。お城のお堀に後ろ向きにダ~ンって落ちたり、火の中を走らされたりね、死ぬなって思ったことは何回もありますよ。そんなんに比べたらウンコを食べるぐらい。

──いやあ、ウンコはウンコで厳しいッスけど(苦笑)。

竜二
まあ、そんなふうに解釈してやってたんですよ。しかも、京都にいた頃はやれどもやれども自分の手柄にならないわけじゃないですか。でも、ウンコはやればやっただけ評価してもらえるわけですからね。名前が残り、取材が来たりするわけですから。こっちのほうがクソ面白いなと(笑)。

──ただ、自伝を読ませていただいたんですけど、高校の時にお好み焼きデートして、彼女が鉄板にお好み焼きを吐いちゃったことがありましたよね。

竜二
そうそう。店員さんも周りのお客さんもドン引きですよ。それで彼女のことを思って、「頼んでもいないのにもんじゃ焼きが来たね」といって僕は食べたんですよ。

──うわあ~、想像するだけで凄まじい絵ですけど。でも、それって高校生の時ですよね。

竜二
そう。東京に来てからはディスコの帰りに中央線に乗って「気持ち悪い、吐きそうや」っていう彼女のために「しゃあないな、ここに吐け」って右の袖口から服の中に吐かせて、2回目は左で、3回目は胸元に吐かせて。「君のぬくもりを感じるよ」とかいっても「最低」とかいわれて。ゲロ食べた子も電車の中でゲロ吐いた子もそれっきり連絡がつかなくなって、俺の善意がわからんのかと!

──わかりにくいですよね(苦笑)。

竜二
いやいや、男はここまでやらなきゃダメなんですよ。タフじゃないとダメ! 杉良太郎じゃないけど、君は人のために死ねるかと。俺の場合は、人のために食えるかだけど、結局、僕の愛は伝わらないんだねえ。

──ゲロだけに酸っぱい思い出ですね(笑)。ともかくそれほど抵抗はなかったんですね。

竜二
まあ、普通の人よりはなかったかもしれないね。でも、自分の中ではあったんですよ。死ぬんちゃうかなって思いましたもん。だから、ゴックンはしなかった。

──どっちでも一緒ですよ!

竜二
いやいや違うんだって。さすがにゴックンすると身体が抵抗するんですよ。「山本竜二、それは食べ物じゃないぞ!」と。

──ワハハハハ!

竜二
ウンコ茶漬けの時なんて、永谷園のお茶漬けの元も入ってるから一瞬うまいんですよ。ご飯も上等なお米を使ってるからうまい。でも、コンマ数秒後にウンコの味がするんで「それは食べ物じゃない!」「戻せ! 出せ!」って(笑)。で、胸のあたりで心と身体の葛藤が始まって普通は口から出てくるんだけど、鼻からブワ~って出てきて鼻にウンコの匂いが染み付いてしばらく取れなくなって、息するたびにウンコの匂いがするという(笑)。

──壮絶ですね。ちなみに、お金のほうはどうだったんですか?

竜二
悪くなかったですよ。ウンコだけじゃなくてピンク映画や普通のAVにも出てましたから多い時には月に100万円ぐらいにはなってました。ただ、その前が全然食えなかったですからね。太秦の時もそうだったけど、そこを辞めて東京に出てきても仕事なんかないんですよ。仕方ないから昼間はテレビ局回ったりの営業をやって、夜に働く生活をずっとしてましたね。いろんな仕事をしましたよ。土方とか、呼び込みとかね。一番覚えているのは新宿のピンサロの仕事。でも、若くてね、やりたくてやってる仕事じゃないから、なんかこう惰性でやっちゃうんだな。それでホステスさんのウケが悪くてね。

──えっ、信じられないですけど。

竜二
態度悪かったんですよ。ホステスさんに呼ばれたら、「はい、ただいま」って片膝つかなきゃいけないんですけど、それがイヤで、ポケットに手を突っ込んで「なに? ああ、わかったわかった」ってこんな調子で。ホステスさんが「ちょっとあんた、なんなのその態度!」って怒っても、「なんや、オバハン、しょうもな。最低や、こんな仕事やってるヤツは」とか言って。

──のちのち自分がもっと最低なことをするのに(笑)。

竜二
そうそう! で、これはもうクビかなと僕は思ったんですよ。そしたら店長が心の広い人で、「お前、まだ仕事あるよ」って地下2階に連れていかれて。そこは潜水艦の中みたいに天井にパイプがいっぱい走ってて、ボイラーがあって熱いところでね。奥に先輩が二人いて、店長が「おい、山本! お前、今日からこの人たちと働け」って言うわけです。見たら一人は小人の方で、もう一人は凄い痩せた人なんですね。で、なにをするのかっていったら、ザーメンのついたおしぼり洗い(苦笑)。

──地下二階で小人とザーメン。どん底ですね、まさに。

竜二
それで、小人の方は梅ちゃんっていう人なんだけど、「お前、山本っていうのか、今日からよろしくな。俺は見てのとおり、身体がちっちゃいんでよ、うまく説明できねえからこいつのいうことちゃんと聞いてたら、仕事、早く覚えるからな」って言って痩せた人を指差すんですよ。でも、その人、実は唖の方で「おぅ、おぅ?」しか言えないの(笑)。

──シャレのわかる小人の方だったと(笑)。

竜二
いや、「よく聞きゃわかるんだよ!」って言ってたんですけどね(苦笑)。まあ、無茶苦茶な所でしたよ。忙しい時なんかおしぼりの数が間に合わなくなるから、ホステスさんたちから文句が出るんですね。そうすると、梅ちゃんが「おい、山本、真面目に働きすぎなんだよ、お前。相手も酔っぱらいだから忙しい時はな、見てろよ、洗わないの」って言って、ザーメン付いてるほうを裏にしてクルクルって丸めて出しちゃうの。「これで大丈夫なんだよ」って言われても心配ですからカーテンの隙間から見てると、お客さん、普通に顔拭いてんの(笑)。

──汚い! そんな生活をどのくらい続けたんですか?

竜二
一ヶ月。熱いんでね、汗が出てくるから額にブツブツが出てきたんですよ。俺は性病が感染ったかと思って、長谷川一夫さんじゃないけど、「役者は顔が命!」ってことで辞めることにしたら、梅ちゃんと唖の方が送別会をしてくれるっていうんです。野郎寿司っていまでもありますけど、歌舞伎町の風林会館の横に。あそこでおごってくれるっていうんで嬉しかったですよ。そしたらね、小人の梅ちゃんも唖の人も泣いてるんですよ。「なんで泣くんですか」って聞いたら「いや、やっとできた健常者の友達だったんだよ」って。それで俺ももらい泣きしちゃってね。なんで泣いたかっていうとね、夢に溢れて東京に出てきたのに、こう言ったら申し訳ないけど、いまこんな人たちに泣かれてるっていう自分の立場がどう考えても惨めで情けなくて。

──まあ、そのくらいどん底を味わわないと。

竜二
でもね、梅ちゃんは僕がね、ポルノ男優でバーっと出てきた時に風の便りで「山本竜二は昔、俺が面倒を見たんだ」って言ってるって聞いて、有難いなって思って。

──結局、そのバイトも大した金にはならなかったんですよね?

竜二
それはそうですよ。それで困ったなと思って当時付き合ってた大阪の彼女、最初の嫁さんになるんですけど、東京に呼んでヒモみたいな生活をしてたんですよ。で、千円ぐらいの小遣いをもらっちゃあ、新宿のしょんべん横丁で飲んでたんです。そこでポルノ映画の制作の方と知り合って、ピンク映画の道に入っていくわけです。

──彼女にはポルノに出ることになったってことは言ったんですか?

竜二
ちゃんといいましたね。「ポルノでも映画は映画だからね、いっときはしょうがないんじゃない。風間杜夫さんだってやってらっしゃったんだし」って理解はあったんですね。だけど、その理解を超えるような仕事までやるようになったんでねえ(苦笑)。

──とりあえず、ポルノで食いしのいで、一般作へというふうに望んでいたわけですよね。

竜二
なかなかそうはいかないんだよね。だって16年間ですよ。心の中ではもう無理だなと思ってましたね。もう僕は一生このピンク映画とか、AVでやっていくんだなあ。役者としてはこっちのほうだけなんだろうなと。でも、夢を捨てるのは辛いから、夢だけは捨てなかったね。だけども、現実的なことを考えるとじゃあどうなるのって。明日も明後日も来年もAVしかないじゃないって。でも、それでも奇跡は起きるんですよ。ミラクルなんです、すべて。ホン~ットにミラクル!

──ミラクルのきっかけはなんだったんですか? 

竜二
ポルノとAVが続いていた時に秋山豊さんって監督さんからね、出演依頼が来たんですよ。僕は当時ね、スタジオ83ってとこでね、AVに出てたんですよ。それが最低のAVでね、要するに消し忘れですよ。当時、ラブホテルでビデオを貸し出して、自分たちのセックスを撮るのが流行った時期があって、それをホテルの経営者の人がダビングしてAVメーカーに買ってくださいってやってたんですね。作品ともいえないようなそんな作品ですよ。そんなビデオを商品化するために、最初と最後に僕が解説を入れてたんですよ、淀川長治の格好して。「みなさん、またお会いしましたね、今日のビデオは凄いですよぉ。どこかのホテルの消し忘れ。ちょっと写真お願いします。出てる人。誰か知りませんねぇ。怖いですね、凄いですね、素人の方がこんなこと、あんなことするんですねえ、びっくりしますよ。それじゃあ、またあとでお会いしましょう」っていうのを最初に入れて、終わったあとも「見ましたか。怖かったですね、凄かったですね、あの女の方、顔に受けてましたねえ。『もっと頂戴』いうてました。怖いですね、あれ、人妻なんですって。浮気ですよ、夫婦と違います。こんなんバレたらどないなるんでしょうね。はい、ではまた次週お会いしましょう。さいならさいならさいなら」ってやってて。

──最高じゃないですか(笑)。

竜二
これを見た秋山豊さんっていう人が「こいつ、オモロイ」ということで、自分の監督デビュー作の『奥様はマゾ』というのに使ってくれて、以来秋山監督の作品は必ず出してもらうってことになったんですよ。その頃たまたま秋山監督も伸び盛りで『奥様はマゾ』の次はデビューしたばかりの島崎和歌子ちゃん主演の『乙女物語-あぶないシックスティーン』というのを撮りはって、それで一般ものに僕も久しぶりに出してもらって、監督が関西テレビの深夜のドラマを撮ることになった時もまた呼んでもらったんですね。それがまた評判良くて、関西テレビのプロデューサーから、『ふぞろいのイレブン』という新しく始まる青春サッカードラマで学校の先生役に推してもらったんですよ。

──それは結構大きい役ですよね?

竜二
そうなんです。レギュラーなんですよ。嬉しいことにそれを撮影する場所が僕の親父もいた、実は親父も佐々木小二郎って役者だったんですけど、兵庫県宝塚撮影所ってところだったんです。

──凱旋ですね(笑)。

竜二
そうなんですよ。太秦じゃなかったけど、ようやく関西に帰れた。それで行ったら、「お前は佐々木さんの息子さんやなあ。よう帰ってきたなあ」いわれて。その秋山監督のおかげでそこまでの仕事にたどり着いた。で、その番組の打ち上げの時にプロデューサーさんに呼ばれて「山本くん、良かったよ。賛否両論だったんだけど君を使うにあたっては。子供番組だけにね」って言われて。

──その頃はまだキチンとしたAV男優ですよね?

竜二
そう、キチンとしたAV男優(笑)。だって宝塚の守衛のおっさんがね、僕が来た時に、「えっ、あんたAVの人やな。宝塚でもそんなの始めるの?」「いや、違いますよ。子供のヤツでんがな」って言うたら「えっ! 子供の相手しまんの!?」「違いますよ、話にならへんわ!」いうて(笑)。それぐらい、みんなビックリしてて。でも、あれね、関西では金曜の夜7時から30分の番組で視聴率22%取ってたんですよ。だから、プロデューサーさんが「またAVに戻るのはもったいない」って言ってくれて、大きな事務所に推薦してくれたんです。僕はそこで初めてマネージャーがつくようになって、それも、そのマネージャーはたまたま太秦にしょっちゅういってはった人だったんですよ、営業で。「僕、太秦は強いです。任しといてください。竜二さん絶対に故郷に帰れますよ。もう少し時間をください」っていってくれはって。そしたら、本当に帰れたんですよ。一番最初は僕のいた映像京都っていう旧大映京都の残党が作った会社。そこの番組『盤嶽の一生』っていう時代劇に呼んでもらって、そのあとは『水戸黄門』『必殺』と東映、松竹、大映と全部帰れたんです。「よう帰ってきた! お帰り!」って言われましたよ。

──太秦出てから…。

竜二
16年。ちゃんと山本竜二様っていう控え室があってね、嬉しいですよ。ホテルもとってくれはって全日空ホテル。堀川の二条城の前の。最高で俺、泣けたわ。その代わり、ちょっと面白くないっていう人もいましたね。「ああ、そうか、東京行ってAVとかポルノやってたらちょっとええ役で帰れるんや。ふ~ん」とか「おい、山本、ちゃんと芝居してくれよ、何回も何回も通行人させられるのはかなわんしな。一回でOKだしてよ」って。「そんないじめんといてくださいよ」って言って一応先輩なんで。

──そういう嫌がらせも含めて帰ってきたなって感じですね。

竜二
そう。ほとんどは喜んでくれましたからね。メシが食えん頃に世話になった照明の方に「竜二、よう帰ってきた!」っていわれて照明パッと当ててもらった時は嬉しかったなあ。泣けますよ。撮影の時も「おい、監督、さっきから竜二見てみい、ええ芝居しとるやないけ、アップ撮ったれよ」っていってくれて、みんなも「そうや、そうや」って。監督も「そうやな」って言ってアップにしてくれて……。嬉しかったですよ。

 

──リアル蒲田行進曲ですね。

竜二
だから、奇跡は起きるんやな、と。

──だから、例えウンコ食ってても、夢は叶うってことですよね。自伝には「目の前のことを本気でやっていけば道はできる」というようなことを書かれてましたけど。

竜二
だから、継続は力なりですよ。ただし、生半可な継続じゃダメですよ。若い人には「続けていれば、時間はかかりますけど、どうにかなりますよ」といってあげたいね、僕がそうやったから。それと、自転車理論って本にも書いてるんだけど、例えば、役者を目指して東京来てはる人って多いよね。そうするとメシが食えんから土方やったり、副職をやる。そうすると本職の仕事が年に何回かしかないのね。それではダメなんです。どんなにマイナーな業界でもいいから金を貰ってやらないと。僕の場合はポルノ映画やAVだったけど、365日ほぼ毎日カメラの前に立ってたから、自転車でいうと上等な自転車じゃない、ボロボロの自転車だけど、毎日乗ってた。そうすると、横から急に子供が出てきたり、車が出てきても対処できるんですよ。でも、一年に何回かしか乗らない人はバーンってぶつかってしまう。どんな自転車でもいいから乗り続けてないとダメですよって。いまでもたまにいい自転車しか乗りたくない人たちと共演することがあるんですよ。そういう人たちは楽屋では偉そうなこと言ってても、現場にいったら手がカタカタ震えてるんですよ。

──なんでもいいから現場にいなさいと。

竜二
その代わり、どんな現場であっても流してやっちゃダメです。どんな最低の現場であっても、どんな最低の作品であっても絶対に俺だけはオモロイと言われるようにやらないといけないんです。

──きつい時代をしのぐ時の考え方ってなにかありますか?

竜二
う~ん、僕は3段階のことしかしないです。問題が起きたら、みんな最初は「えらいこっちゃ」と驚くでしょ。次は「どないしよ?」と思案する。でも、3つ目がたぶん違ってて「ま、ええわ」ってコレですわ。ま、どうにかなるわっていうのが秘訣といえば、秘訣。深く考えないってところですね。実は、今日現在もね、「殺す」っていう人に脅迫されてるの。いまも乗り込んでくるかもわからへん。怖いけどね、ケセラセラ。それが僕のしのぎ方ですね。

※ペキンパー第弐号にはインタビュー本文に加え、付録DVDにインタビューの様子や特別映像が収録されています!

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「ヤクザから一番ヤクザらしい格好だっていわれたよ」素人喧嘩<ステゴロ>インタビュー 真樹日佐夫 第02回

[:ja]

2011年10月 写真:川保天骨 インタビュー:中村カタブツ君 協力:(株)真樹プロダクション

※このインタビューは、ペキンパー第弐号に収録されたものをPECKINPAH DIGITAL掲載用に編集したものです。

※インタビュー第01回はこちら。

──先生、男ってよくメンツにこだわるっていいますが、あれはどうなんですか。

真樹
メンツ、メンツっていうのは、気持ちはわかるが、俺なんかはあんまり考えたことはねえな。ダメな時にメンツだけにこだわってると繕いようがなくなり、そこでギブアップだよ。ということはメンツなんていらねえってことになるよな。それよりも自分との戦いだよ、大事なのは。実をいうと戦いにおける強さってことについちゃ、俺は人の意見とちょっと違うんだな。多くの師範たちは稽古して強くなれっていうけれども、自分より強い奴にはいくら稽古しても勝てないよ。そんなこと俺が大きい声でいうのもなんなんだけど(苦笑)。
じゃあ、なんのために空手をやってるのかといえばさ、一番の強敵は自分だからだよ。もう一人の自分との戦いの繰り返しで男っていうのは生きてるようなもんなんだ。俺にしたって、稽古もしないで酒を飲みたがるもう一人の自分がいる。同時に「それじゃあちょっとまずいんじゃないか」と思う自分がいて、そのせめぎ合いだな。で、しょうがねえから9時半までやるかって。要するに克己心ということで、一番強敵なのはもう一人の自分なの。その自分に勝った時の小さな達成感が毎日あるわけ。今日は20キロ走りたくないと思ってたのが走れた。そういうごく身近な達成感が、人間がくたばらないで強くいきていける原動力になってると思う。大きい達成感っていうのはそうそうクリアできないだろ。たとえ設定したところで達成できなければしょうがねえ。小さな達成感をクリアしていくことが大切なんだよな。

──それが瞬間瞬間の真剣勝負ってことなんですね。

真樹
そういうことにつながっていくよな。

──先生の場合、メンツでいうと自分がどうのこうのっていうよりも仲介役に回ることが多いですよね。極真会が分裂した時もそうですし、犬猿の仲といわれた佐山聡さん(初代タイガーマスクにして現・掣圏真陰流興義館総監)と前田日明さん(総合格闘技リングス CEO 。現在不良格闘技 THE OUTSIDER を主催)を対談の席につけた時なんかもそうですけど、あんな大変なことをなぜ引き受けるんですか。

真樹
だって佐山と前田の両巨頭をあのまんまにしておくほうがおかしいだろう。昔、あれほど熱く戦った二人をさ、あのまま仲違いさせちゃったままリタイアさせちゃったら、それはやっぱり格闘技界の損失だよ。俺は巨視的に捉えて考えるわけだ。同じ会場に居合わせるだけでも奇跡だっていわれてた二人を俺が「来い、来い」といって『週刊文春』で対談させて、最後に佐山が「前田、今日はお前に会えて良かったよ」って。2時間の苦難の末にだよ。最初の1時間ぐらい二人とも一言も口きかねえんだ。俺ばっかワイン飲んで酔っ払っちゃったよ(苦笑)。で、佐山は飲めねえだろ。前田に付きあえてっていったら「自分は今日は車ですから」って。「もうお前らなんか喋れ」って俺が切れちゃってさ(笑)。で、喋ったのがやっと1時間ぐらい経ってからだよ。俺は前田も可愛いし、佐山も可愛い。二人がいる格闘技界も大事だよ。大山先生に会う前からやってた柔道を含めていうともう60年以上いる世界だからね。いまはちょっと景気が悪くてプロ格闘技界も大変だけど、プロだけが格闘技とはいえねえからな。

──極真が割れた時も両方の組織から間に立ってくださいっていわれてましたよね。

真樹
そうだけど、俺は割れたのなんか今でも認めてねえ。単なる仲間割れだ、兄弟喧嘩だ。早くいい加減仲直りしろって。ずいぶん前に、ある極真の人間と飲んだけど、「先生のことは大好きなんですけど、自分の嫌いなヤツのことも可愛がってるからイヤだ」とか言ってさ。「お前なんだ、その女々しさは」って(笑)。おもしれえだろ。最近の奴っていうのは大概こうなんだよ。男の焼きもちは女よりも始末が悪い。女性の焼きもちなんて可愛らしいもんだよ。「私とあの人とどっちが大事なの!」って。そんなの「どっちも可愛いよ。3 P やるか?」っていったら、それで終わっちゃう(笑)。だってどっちも本当に可愛いんだからベッドにおいでだよ。

──メンツにこだわるっていうのもどこか嫉妬に似た感覚なんですかね。

真樹
だから、俺は『格闘家は女々しい奴が9割』(東邦出版)って本を書いたろ。あれを前田にプレゼントだって渡したんだよ。そしたらジーッと表紙を見てて、「先生、格闘家は女々しいヤツが9・9割です」って 吐 ( ぬ ) かしやがった。「じゃあ、残りの0・1割にきみも入るわけか」っていってやったら赤くなってたけどな(笑)。ただなあ、女々しいから弱いんじゃない。女々しいから自分の逃げ道を、自分の生き延びる道を考えるから負けないんだね。弱さを持っていない人間なんていないよ。弱さなんかないって言い切れる人間と酒飲んだって面白かないよ。弱さはみんな平等にあって、それを克服しようとするだろう、普通の人間なら。それで克服できたらそこで終わりじゃなくて、また別の弱さが出てくるんだよ。次から次へと押し寄せてくる、それとの格闘でもあるわけだよな、男が生きるってことは。その弱さから逃げちまう手もあるけど、その瞬間だよ、男の生き方が小さくなるのは。逆に逃げなければ、死ぬまでやっぱり苦しさは続く。だけど、それをあえて甘受するのが強さを知るっていうことになるんじゃねえか。だから、強さを知ることは弱さを知ることと背中合わせよ。しかしだからといって人に俺の弱点はこうだっていうヤツもいねえだろ(笑)。強さもひけらかすとアホみたいだし、弱さも吹聴すればバカみたいなもんだしさ。だから、男はつらいよ、なんだよ。

──両方人には言えないと。

真樹
しゃべれないよ。男は黙って真剣勝負なんだよ。女性はワーワー言って、ガーッと泣いて涙の許容量以下になればあとはニッコリできる。バケツ一杯だったものが七分目ぐらいまで減れば泣きやんでニッコリできるんだよ。だけど、男の涙っていうのはそういうもんじゃないんだ。全部空っぽになる時以外は泣かない。それぐらいは男として生まれてきたからには男の宿題というかさ、手前に課していかなければ甲斐がないんだ。違うか?

──強さも弱さも黙って我慢するんですか。

真樹
だってさ、男はこういうもんだとか言うという以前に、やっぱり最終的には女性を守んなきゃいけない立場だろ。女性は子孫を増やさなければいけない立場で、その女性を守ってやらなければ子孫なんて増えていかねえんだから。だから、男と女の違いっていうのはあるんだけど、男らしさ、女らしさっていうのは立場の違いだけでしかないよ、突き詰めていっちまえば。だから、男が男らしくあろうというのは自分が守んなきゃなんない女との出会いがあって、この女をどうしたら守ってやれるかという努力を人知れずするところなんだな、やっぱりな。

──なんのために強くならなければいけないかその根本を踏まえなければ、強さに意味なんかないと。

真樹
そういうことだよ。それにやっぱり女性は可愛いしな、いないと困るだろ(笑)。

 

──最後に、先生のファッションについてもお聞きしたいんですが。

真樹
ファッション? ああ、俺はいまやグラビアアイドルだからな(笑)。

──ホントに昔から格好良いと思ってたんですけど(笑)。

真樹
変わらねえだろ? 村上竜司(世界空手道連盟士道館・士魂村上塾塾長)に「先生、服装が 50 年変わってないですね。 20 歳の時から 70 まで同じ格好ができるのが凄い」っていわれたけど、あれは褒めてるわけじゃねえよな(笑)。

──いえいえいえ。ちなみに洋服は業者さんが道場まで持ってきて、それで選ぶんですよね?

真樹

そうだよ。店に行くヒマがねえから、ちっちゃいトラックみたいなのでハンガーにぶら下げて運んできてそこから選ぶんだな。プレタポルテならそうだな。生地から選ぶオートクチュールは最近あんまりやってねえな。

──プレタポルテとオートクチュール(笑)! 

真樹
だいたいシーズンごとに一年に4回は来るよな。あと海外では目についたものを買うよ。空のスーツケースを持って行って、一杯にして帰ってくる。俺もヒマがあればショッピングは嫌いじゃねえからな。たとえば、最近は東南アジアによく行くんだけど、スーツケースを一杯にして日本を出てもな、向こうに行くと合わないんだ。やっぱり現地は日本でイメージしていっても気候も雰囲気も違うんだな。だったら、現地で買ったほうが手っ取り早いだろ。それで帰りに一杯にして帰ってくる。

──現地調達が一番。

真樹
ちょっと前にベストセラーになった『人は見た目が9割』(竹内一郎著)って本があったけど、大事なんだ、服装って。日本人っていうのは武士の時代の頃から妙なやせ我慢の美学があって“男子は辺幅を飾らず”といってな。身の回りのことを気にしてるヒマがあったら内面を向上させろっていう考え方だ。男がお洒落にこだわるのは女々しいってことなんだけど、絶対そうじゃない。人の印象っていうのが見た目で九割決まるとすれば、大事な才能のひとつだよな。そう考えないと話があわなくなる。それは食い物と比べればよくわかる。食えればなんだっていいって奴もいるだろ? ご馳走なんて考えないんだな。満腹になればなんだっていい。そういうのと同じで着れればなんでもいい、裸が隠れればなんでもいいっていうね。本当は裸が一番楽だけど着る以上はさ、ちっとはほかの奴と違った格好をするべきだよ。ところが、いまの若い奴っていうのはほかと同じ格好をしたがるんだよな。そうしないと不安なんだよ、自分だけ、一人で浮いっちゃうとかいって。俺なんか中学の時に親父の背広を着て学校に行って、よく立たされたもんだぜ(笑)。

──中学の時から(笑)。

真樹
だって、面白くもなんともねえだろ、来る日も来る日も詰襟じゃあ。それがいまはみんなと一緒でいたいという発想なんだな。だから、若い連中は“なんとかファッション”とかって決まってきちゃう。

──結局パターン化されてしまいますね。

真樹
それならそれでもいいけどさ、どうせなら 10 人いたら俺が一番目立つというぐらいは考えねえと。目立ってなんぼの世界ではないにしても、少しはそういうのもあっていいよな。

──ちょっと言いにくいんですが、先生のファッションはヤクザの方たちよりもヤクザ的で目立つというか(笑)。

真樹
ヤクザから「一番ヤクザらしい格好だ」って言われたんだから(笑)。大阪の街を4人で歩いて、俺だけがカタギであとはみんなヤクザなのに「なんか親分みたいですね」って言われてな(笑)。排除条例とかあるから、いまは一緒に歩くこともできねえけどな。

──だから、いまやあちらの世界でもファッションリーダーというか(笑)。

真樹
ガハハハ! だからって昔と同じ格好をしてるだけなんだよな。俺は中間色とかボケた色は嫌いだからだいたい原色になるんだよな。それだけの話だよ。

──服装にこだわるっていうのはきちん見栄を張るっていうことにもつながるんですか?

真樹
いや、見栄じゃなく見映えだ。見栄を張ってるわけじぇねえんだ。醜さを消して、人にいい印象を与えたいっていうのは見栄じぇねえだろう。相手に協力的な態度を取って、相手に不快感を与えないというのが見映えだ。だけど、見栄というのは自分だけが背伸びして相手のことなんかどうでもいいっていう考え。相手が主になるか、自分が主になるかは大きな違いだよ。見映えにこだわるというのは、相手から自分を見ているという一つの認識であり、それはやっぱり自分の責任感でもあるわけだしな。

──ファッションひとつとっても奥が深いですね。今日は勉強になりました!

真樹
ああ。こんな話でよければいつでも聞きにおいで(笑)。

 

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2011年10月 写真:川保天骨 インタビュー:中村カタブツ君 協力:(株)真樹プロダクション

※このインタビューは、ペキンパー第弐号に収録されたものをPECKINPAH DIGITAL掲載用に編集したものです。

※インタビュー第01回はこちら。

──先生、男ってよくメンツにこだわるっていいますが、あれはどうなんですか。

真樹
メンツ、メンツっていうのは、気持ちはわかるが、俺なんかはあんまり考えたことはねえな。ダメな時にメンツだけにこだわってると繕いようがなくなり、そこでギブアップだよ。ということはメンツなんていらねえってことになるよな。それよりも自分との戦いだよ、大事なのは。実をいうと戦いにおける強さってことについちゃ、俺は人の意見とちょっと違うんだな。多くの師範たちは稽古して強くなれっていうけれども、自分より強い奴にはいくら稽古しても勝てないよ。そんなこと俺が大きい声でいうのもなんなんだけど(苦笑)。
じゃあ、なんのために空手をやってるのかといえばさ、一番の強敵は自分だからだよ。もう一人の自分との戦いの繰り返しで男っていうのは生きてるようなもんなんだ。俺にしたって、稽古もしないで酒を飲みたがるもう一人の自分がいる。同時に「それじゃあちょっとまずいんじゃないか」と思う自分がいて、そのせめぎ合いだな。で、しょうがねえから9時半までやるかって。要するに克己心ということで、一番強敵なのはもう一人の自分なの。その自分に勝った時の小さな達成感が毎日あるわけ。今日は20キロ走りたくないと思ってたのが走れた。そういうごく身近な達成感が、人間がくたばらないで強くいきていける原動力になってると思う。大きい達成感っていうのはそうそうクリアできないだろ。たとえ設定したところで達成できなければしょうがねえ。小さな達成感をクリアしていくことが大切なんだよな。

──それが瞬間瞬間の真剣勝負ってことなんですね。

真樹
そういうことにつながっていくよな。

──先生の場合、メンツでいうと自分がどうのこうのっていうよりも仲介役に回ることが多いですよね。極真会が分裂した時もそうですし、犬猿の仲といわれた佐山聡さん(初代タイガーマスクにして現・掣圏真陰流興義館総監)と前田日明さん(総合格闘技リングス CEO 。現在不良格闘技 THE OUTSIDER を主催)を対談の席につけた時なんかもそうですけど、あんな大変なことをなぜ引き受けるんですか。

真樹
だって佐山と前田の両巨頭をあのまんまにしておくほうがおかしいだろう。昔、あれほど熱く戦った二人をさ、あのまま仲違いさせちゃったままリタイアさせちゃったら、それはやっぱり格闘技界の損失だよ。俺は巨視的に捉えて考えるわけだ。同じ会場に居合わせるだけでも奇跡だっていわれてた二人を俺が「来い、来い」といって『週刊文春』で対談させて、最後に佐山が「前田、今日はお前に会えて良かったよ」って。2時間の苦難の末にだよ。最初の1時間ぐらい二人とも一言も口きかねえんだ。俺ばっかワイン飲んで酔っ払っちゃったよ(苦笑)。で、佐山は飲めねえだろ。前田に付きあえてっていったら「自分は今日は車ですから」って。「もうお前らなんか喋れ」って俺が切れちゃってさ(笑)。で、喋ったのがやっと1時間ぐらい経ってからだよ。俺は前田も可愛いし、佐山も可愛い。二人がいる格闘技界も大事だよ。大山先生に会う前からやってた柔道を含めていうともう60年以上いる世界だからね。いまはちょっと景気が悪くてプロ格闘技界も大変だけど、プロだけが格闘技とはいえねえからな。

──極真が割れた時も両方の組織から間に立ってくださいっていわれてましたよね。

真樹
そうだけど、俺は割れたのなんか今でも認めてねえ。単なる仲間割れだ、兄弟喧嘩だ。早くいい加減仲直りしろって。ずいぶん前に、ある極真の人間と飲んだけど、「先生のことは大好きなんですけど、自分の嫌いなヤツのことも可愛がってるからイヤだ」とか言ってさ。「お前なんだ、その女々しさは」って(笑)。おもしれえだろ。最近の奴っていうのは大概こうなんだよ。男の焼きもちは女よりも始末が悪い。女性の焼きもちなんて可愛らしいもんだよ。「私とあの人とどっちが大事なの!」って。そんなの「どっちも可愛いよ。3 P やるか?」っていったら、それで終わっちゃう(笑)。だってどっちも本当に可愛いんだからベッドにおいでだよ。

──メンツにこだわるっていうのもどこか嫉妬に似た感覚なんですかね。

真樹
だから、俺は『格闘家は女々しい奴が9割』(東邦出版)って本を書いたろ。あれを前田にプレゼントだって渡したんだよ。そしたらジーッと表紙を見てて、「先生、格闘家は女々しいヤツが9・9割です」って 吐 ( ぬ ) かしやがった。「じゃあ、残りの0・1割にきみも入るわけか」っていってやったら赤くなってたけどな(笑)。ただなあ、女々しいから弱いんじゃない。女々しいから自分の逃げ道を、自分の生き延びる道を考えるから負けないんだね。弱さを持っていない人間なんていないよ。弱さなんかないって言い切れる人間と酒飲んだって面白かないよ。弱さはみんな平等にあって、それを克服しようとするだろう、普通の人間なら。それで克服できたらそこで終わりじゃなくて、また別の弱さが出てくるんだよ。次から次へと押し寄せてくる、それとの格闘でもあるわけだよな、男が生きるってことは。その弱さから逃げちまう手もあるけど、その瞬間だよ、男の生き方が小さくなるのは。逆に逃げなければ、死ぬまでやっぱり苦しさは続く。だけど、それをあえて甘受するのが強さを知るっていうことになるんじゃねえか。だから、強さを知ることは弱さを知ることと背中合わせよ。しかしだからといって人に俺の弱点はこうだっていうヤツもいねえだろ(笑)。強さもひけらかすとアホみたいだし、弱さも吹聴すればバカみたいなもんだしさ。だから、男はつらいよ、なんだよ。

──両方人には言えないと。

真樹
しゃべれないよ。男は黙って真剣勝負なんだよ。女性はワーワー言って、ガーッと泣いて涙の許容量以下になればあとはニッコリできる。バケツ一杯だったものが七分目ぐらいまで減れば泣きやんでニッコリできるんだよ。だけど、男の涙っていうのはそういうもんじゃないんだ。全部空っぽになる時以外は泣かない。それぐらいは男として生まれてきたからには男の宿題というかさ、手前に課していかなければ甲斐がないんだ。違うか?

──強さも弱さも黙って我慢するんですか。

真樹
だってさ、男はこういうもんだとか言うという以前に、やっぱり最終的には女性を守んなきゃいけない立場だろ。女性は子孫を増やさなければいけない立場で、その女性を守ってやらなければ子孫なんて増えていかねえんだから。だから、男と女の違いっていうのはあるんだけど、男らしさ、女らしさっていうのは立場の違いだけでしかないよ、突き詰めていっちまえば。だから、男が男らしくあろうというのは自分が守んなきゃなんない女との出会いがあって、この女をどうしたら守ってやれるかという努力を人知れずするところなんだな、やっぱりな。

──なんのために強くならなければいけないかその根本を踏まえなければ、強さに意味なんかないと。

真樹
そういうことだよ。それにやっぱり女性は可愛いしな、いないと困るだろ(笑)。

 

──最後に、先生のファッションについてもお聞きしたいんですが。

真樹
ファッション? ああ、俺はいまやグラビアアイドルだからな(笑)。

──ホントに昔から格好良いと思ってたんですけど(笑)。

真樹
変わらねえだろ? 村上竜司(世界空手道連盟士道館・士魂村上塾塾長)に「先生、服装が 50 年変わってないですね。 20 歳の時から 70 まで同じ格好ができるのが凄い」っていわれたけど、あれは褒めてるわけじゃねえよな(笑)。

──いえいえいえ。ちなみに洋服は業者さんが道場まで持ってきて、それで選ぶんですよね?

真樹

そうだよ。店に行くヒマがねえから、ちっちゃいトラックみたいなのでハンガーにぶら下げて運んできてそこから選ぶんだな。プレタポルテならそうだな。生地から選ぶオートクチュールは最近あんまりやってねえな。

──プレタポルテとオートクチュール(笑)! 

真樹
だいたいシーズンごとに一年に4回は来るよな。あと海外では目についたものを買うよ。空のスーツケースを持って行って、一杯にして帰ってくる。俺もヒマがあればショッピングは嫌いじゃねえからな。たとえば、最近は東南アジアによく行くんだけど、スーツケースを一杯にして日本を出てもな、向こうに行くと合わないんだ。やっぱり現地は日本でイメージしていっても気候も雰囲気も違うんだな。だったら、現地で買ったほうが手っ取り早いだろ。それで帰りに一杯にして帰ってくる。

──現地調達が一番。

真樹
ちょっと前にベストセラーになった『人は見た目が9割』(竹内一郎著)って本があったけど、大事なんだ、服装って。日本人っていうのは武士の時代の頃から妙なやせ我慢の美学があって“男子は辺幅を飾らず”といってな。身の回りのことを気にしてるヒマがあったら内面を向上させろっていう考え方だ。男がお洒落にこだわるのは女々しいってことなんだけど、絶対そうじゃない。人の印象っていうのが見た目で九割決まるとすれば、大事な才能のひとつだよな。そう考えないと話があわなくなる。それは食い物と比べればよくわかる。食えればなんだっていいって奴もいるだろ? ご馳走なんて考えないんだな。満腹になればなんだっていい。そういうのと同じで着れればなんでもいい、裸が隠れればなんでもいいっていうね。本当は裸が一番楽だけど着る以上はさ、ちっとはほかの奴と違った格好をするべきだよ。ところが、いまの若い奴っていうのはほかと同じ格好をしたがるんだよな。そうしないと不安なんだよ、自分だけ、一人で浮いっちゃうとかいって。俺なんか中学の時に親父の背広を着て学校に行って、よく立たされたもんだぜ(笑)。

──中学の時から(笑)。

真樹
だって、面白くもなんともねえだろ、来る日も来る日も詰襟じゃあ。それがいまはみんなと一緒でいたいという発想なんだな。だから、若い連中は“なんとかファッション”とかって決まってきちゃう。

──結局パターン化されてしまいますね。

真樹
それならそれでもいいけどさ、どうせなら 10 人いたら俺が一番目立つというぐらいは考えねえと。目立ってなんぼの世界ではないにしても、少しはそういうのもあっていいよな。

──ちょっと言いにくいんですが、先生のファッションはヤクザの方たちよりもヤクザ的で目立つというか(笑)。

真樹
ヤクザから「一番ヤクザらしい格好だ」って言われたんだから(笑)。大阪の街を4人で歩いて、俺だけがカタギであとはみんなヤクザなのに「なんか親分みたいですね」って言われてな(笑)。排除条例とかあるから、いまは一緒に歩くこともできねえけどな。

──だから、いまやあちらの世界でもファッションリーダーというか(笑)。

真樹
ガハハハ! だからって昔と同じ格好をしてるだけなんだよな。俺は中間色とかボケた色は嫌いだからだいたい原色になるんだよな。それだけの話だよ。

──服装にこだわるっていうのはきちん見栄を張るっていうことにもつながるんですか?

真樹
いや、見栄じゃなく見映えだ。見栄を張ってるわけじぇねえんだ。醜さを消して、人にいい印象を与えたいっていうのは見栄じぇねえだろう。相手に協力的な態度を取って、相手に不快感を与えないというのが見映えだ。だけど、見栄というのは自分だけが背伸びして相手のことなんかどうでもいいっていう考え。相手が主になるか、自分が主になるかは大きな違いだよ。見映えにこだわるというのは、相手から自分を見ているという一つの認識であり、それはやっぱり自分の責任感でもあるわけだしな。

──ファッションひとつとっても奥が深いですね。今日は勉強になりました!

真樹
ああ。こんな話でよければいつでも聞きにおいで(笑)。

 

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