2011年 写真:川保天骨 インタビュー:オルタナビジョン
山本竜二は知る人ぞ知る伝説の男優だ。アラカンこと嵐寛寿郎の甥っこという俳優としてはサラブレットの血筋にありながら、ピンク映画、AVの世界に飛び込み、しかも、ホモに熟女に果てはニワトリともファック! 極めつけは汚物にも手を出すという、はたから見ていると狂気の行動としか見えないことを飄々とこなす。
その一方、役者としてはNHK大河ドラマに出演するなど陽のあたる道も堂々と歩んでいる。一体どうやったらそんなことができるのだろうか? この男の底知れない生命力はどこから湧き出てくるのであろうか? 天国と地獄を軽々と行き来する山本竜二の生き様に迫る!
※このインタビューは、ペキンパー第弐号に収録されたものをPECKINPAH DIGITAL掲載用に編集したものです。
竜二
今日はどんな取材なんですか?
──この本のテーマは「男の中の男」なんですが、そうなるとやっぱり竜二さんを外すわけにはいかないと思うんですね。
竜二
僕が男の中の男!? まあ、僕はホモ映画も撮りましたからね(苦笑)。
──まさに“男の中の男”だと(笑)。
竜二
入れて入れられ、ね。そういう意味じゃ間違いなく“男”を知ってるんですけどそういうことじゃないでしょ?
──どん底の中でいかにシノいできたかという部分ですね。なにしろ、竜二さんの場合、京都・太秦の大部屋俳優からポルノ俳優になって、その後AVで有名になるわけですけど、かなり特殊なジャンルで名を挙げましたからね。しかも、その一方で一昨年はNHKの大河ドラマ「篤姫」にも出演してるという、振り幅の大きさが凄いんですよ。
竜二
この前はね、NHKのラジオドラマで徳川家康役をやりました(照)。
──ホント凄い落差ですよね。特に竜二さんの場合、ジャンルがジャンルでしたからね。
竜二
そうそう。普通AV男優っていったら相手は女でしょ。しかもキレイな女の人。でも、僕は女優さんだけと違いますからね。男ともやったしね、お婆ちゃんともやった、あとはニワトリともやりましたよ。そんなんばっかですよ(笑)。
──ニワトリとのファックはいまや伝説ですからね。
竜二
あれは20年以上前になりますけど、業界で有名な某AVメーカーがあるんですよ。そこと仕事することになって待ち合わせの場所に行ったらメーカーの社長さんがいるだけでスタッフがいないんです。「スタッフはどうしたんですか」って聞いたら、社長さんが「大丈夫です、私が全部出来ますから」なんていうんで車に乗り込んだら、スタッフはまだいいとしても女の子までいないわけですよ。「すいません、女の子はあとから来るんですか?」「いいえ、今日の山本君の相手はすでに後ろにいるんです」っていうんですね。でも、後ろの席を見ても誰もいないんですよ。
──おかしな話ですよね。
竜二
ただ箱がひとつ置いてあって、コトコト動いてるだけ。耳をすますとコッコッコッて鳴いてるんですよ。「えっ!」と思って社長の顔を見たらニヤっと笑って「そうです! 今日の竜二さんの相手はニワトリです。ニワトリを女だと思ってレイプしてください!」って(笑)。
──いきなり無茶苦茶を言いますね(笑)。
竜二
それで現場が富士の樹海になって、「いいですか、代わりがいませんからね、逃さないでください。じゃあ、襲って、スタート! ああダメダメ、カット、NG!」とかいって怒るんですよ。「山本君、私はさっき言ったじゃないですか、女を襲うように襲うんですよ。それじゃあ、どう見てもニワトリを虐めてるようにしか見えません!」って(笑)。
──いや、だって(苦笑)。
竜二
そう。だってニワトリを虐めてるだけですからね(笑)。そう言ったら社長も「仕方ないですねえ、じゃあ、もうそろそろレイプしてください!」っていうんで「どこにオメコがあるのかわかりません」「しょうがないですねえ、じゃあ、やってるふりでいいですよ、擬似で!」なんて話をしてたんですけど、その時にハッと気がついたんですよ。そのニワトリ、よく見たら立派なトサカがある。オスだったんですよね(苦笑)。
──人選ミスをしていたと(笑)。
竜二
トリのトリ違い(苦笑)。それでなんとか射精シーンを撮って終わりかなって思ったら、「じゃあ、最後にニワトリの首をはねて殺してください」っていうんですよ。「いや、そんなこと僕やったことないですよ」って断ると「ワガママ言っちゃダメです! 私はあなたを一日買ってるんですからね、言ったとおりにやってください!」ってまた怒る。それで、包丁でニワトリの首を切ったんですけど、ああいう時って遠慮したらダメですね、首が半分だけ切れてかえって可哀想。結局最後は手でむしりとることになっちゃったんですよぉ……。
──凄惨ですねえ。
竜二
でね、社長さんに「これはちゃんと食べましょうよ、食用で殺されるならまだしもAVで殺されたら可哀想ですよ」って言ったんですが、「あのね、そういう情けは不必要なんですよ。こんなものはいらない」ってポイって樹海に捨てちゃって(苦笑)。だから、富士の樹海には自殺者の死体だけでなく、首のないニワトリの死体も一羽確実にあります。
──これが有名なニワトリファック事件の全貌だったんですね。もう一つ、竜二さんを語る上で欠かせないのがウンコですよね。
竜二
僕は大部屋俳優出身だからイヤだっていうのが基本的にないんですよ。AVの仕事をする時も「本番するのは役者の仕事じゃない」なんていって断ったりする役者さんって多かったんですけど、僕はそんなことは一切ない。でも、その僕のなんでもやりますが逆にアダになったわけですよ(苦笑)。
──なんでもやりすぎたと(笑)。そもそもなんでウンコと関わることになったんですか?
竜二
昔、高橋樹里ちゃんというAVの女優さんとよく共演してて、撮影終わったあともよく飲みにいってたんですよ。で、ある日「竜ちゃん、ちょっと相談があんねん」と。「私、ちょっと竜ちゃんには言ってへんかったけど、スカトロのビデオ出てるのよ」「スカトロってなに?」「ウンコ」って言うから、シャレやなくてフ~ンっていうて(笑)。で、「最近そこのメーカーの社長さんが、男優さんがいなくて困ってはるんやけど、竜ちゃん、やってくれへん?」っていうわけです。まあ、僕もちょっと酔ってたからね。樹里ちゃんのことも好きやったし、「それじゃあ、その社長さんに僕の電話番号教えといて」なんていって。そしたらすぐ電話がかかってきて、「実は電話では説明しずらいんで、直接事務所に来てくれますか」と。それで事務所に行ったら今度は「口でも説明しずらいんでこのビデオを見てください」って言うわけですよ。
──なんか怖いですね(笑)。
竜二
怖いですよ?(笑)。だってモニターにはいきなり女の子のお尻のアップが映しだされましたからね。で、しばらくすると肛門がグーッと下がってきてポコッとウンコの先が出てくる。それがグーンと出てきてポトッと落ちると、カメラマンも慣れたもので、その落ちるウンコを追っかけてパーンダウンするんですよ(笑)。
──プロの仕事ですね。
竜二
素晴らしいですよ。でもね、次の瞬間、そのウンコは下にいたおじさんの口の中にパクッと入っちゃったんですね。そこで社長さんがピッとビデオを止めて「山本さん、この男優が最近いなくなりました」と(笑)。
──ワハハハ! 厳しいオファーですね。
竜二
僕はどうしようかなと。「ちょっとだけ考えさせてください」と言ってその日は帰ったんですね。
──考える余地があるのが凄いんですけど(苦笑)。
竜二
いや、だから、ピンク映画の先輩の池島ゆたかっていう役者に相談したんですよ。そしたら池さんが「役者はな、なんでも経験なんだよ。滅多にウンコなんか食うチャンスなんかないんだからやったほうがいい」って。僕も「これは役者の肥やしになりますね、言葉通りに」なんてシャレをいいながらやることにしたんですね(苦笑)。
──つまり、あんまり抵抗なかったと。
竜二
いやいや、最初は顔になすりつけたり、口に入れたりからですけど。
──いやいや、最初からもうそこまでやってるんですか!ってレベルなんですけど(苦笑)。慣らし運転みたいなことは一切しなかったんですか?
竜二
ないない。僕が社長さんにいうたのは、無理やり女の子にウンコを出さしてるビデオじゃなくて、やってるもん同士は「僕たち楽しいんです」っていうものにしたかったんですよ。第三者が見たらどんなに変態な行為であっても、やってるもんが楽しかったら救いがあるじゃないですか。それで当時『さんまのまんま』が始まったばかりで、あの形式にしようと。毎回毎回AVでご活躍されてる女優さんが、“山本竜二の部屋”に来て、お尻遊びして、最後ウンコして帰ってもらうってスタイルになったわけですよ。
──また凄い部屋を作りましたね(笑)。
竜二
ホントにこの部屋は凄くてね、カメラ3台使って撮ってたんですよ。テレビ局みたいに。
それで最後ウンコする時は、「あなたの顔を1カメが、あなたのお尻を2カメが、そして私を含めた全体像を3カメが撮っております。AV広しといえどもマルチで撮っているのはビデオインターナショナルの作品だけです!」とか言ってたんですよ。
──贅沢ですね。
竜二
贅沢なウンコでしょ。しかも売れたんですよ。アヌスシリーズっていってね、アヌスのつぶやき、アヌスのささやきとかいろんなシリーズが出来ました。そしたら、また社長から電話がかかってきて、「山本くん、売れてることは売れてるんだけど、最近ちょっと売れ行きが横ばいになってきてね。なにかアイデアないかね」ってウンコだけにもうひとひねりほしいってわけですよ(笑)。それで僕が「そうですねえ、もうウンコ食べてますしね、顔にもなすりつけてるでしょう。もう次やるとしたら、料理するぐらいしかないんじゃないですかね」っていったら、「山本くん、それだーッ! ウンコを料理しよう!!」ってことで『ウンコ3分間クッキング』っていうシリーズが増えるわけですよ(笑)。
──自分で増やしてしまったと(笑)。
竜二
最初はやっぱりウンコカレーね。次がウンコミートスパゲティ、あとはウンコ寿司。納豆巻きみたいにするの。海苔ひいて、ご飯ひいて、ウンコ置いて、よしずで巻いて、包丁で切って食べるんですよ。
──うわぁ~。
竜二
で、食べる時は北の方向を向いて食べたりするんですよ。
──恵方巻き(笑)!
竜二
幸運が来ますようにって。でも、運じゃないよ、ウンコだよって(笑)。
──身体張ったギャグですね(笑)。
竜二
そんなことをやってたら、「平凡パンチ」という雑誌がぜひ取材させてほしいと。担当は杉作J太郎さんで銀座のマガジンハウスに訪ねていったら地下の大きなスタジオに、ハリボテの巨大なウンコが作ってあって、僕が持つ用に大きなナイフとフォークも用意してある。あれは嬉しかったなあ。大部屋出身でしょ、自分のことなんて新聞や雑誌に取り上げられるなんてことがそれまでなかったんで、後生大事に残しておいたんですよ。そしたら、それを最初の嫁に見られて「あんたのやってる仕事ってこういうことなの! ポルノだけだって本当はいろいろ言いたいことがあるのにウンコ食べてるの、仕事で! 最低やな! もう私を取るか、ウンコを取るか、はっきりしてよ!」って言われてね(苦笑)。
──そんな選択でいいのかと思いますよね(苦笑)。
竜二
だってウンコは排泄物だよ、自分と排泄物を天秤にかけてどうするのと。「でも、あなたはウンコがそのぐらい好きなんでしょ」って言うから「好きでやってるわけじゃないよ」って言ったんですけど、結局離婚することになったんでウンコ取っちゃった結果になったんですよ(苦笑)。
──切ない話ですねえ。
竜二
ともかく嫁バレした時点でウンコの仕事は辞めたんですね。そしたら歌舞伎町を歩いてる時にいきなり「山本竜二さんですよね、生きてたんですか?」って言われたんですよ。「なんですか、生きてますよ」「いや、我々の間では山本竜二さんは死んだことになってます」っていうから「我々ってなんですか?」「僕らはウンコマニアなんです」って(笑)。彼らはウンコビデオしか見ないから、急に僕が出なくなったんで、ウンコの食べ過ぎで死んだんだって思ってたみたいなんですよ。「良かった、仲間に言っときます。ウンコ食べても全然大丈夫なんだ」って。「なんだよ、心配してたのはそっちかよ」っていう(苦笑)。
──本当に面白い人生を生きてますね(笑)。ところで、ひとつ質問があるんですけど、普通ウンコを食べませんかってオファーがきても、なかなか引き受けないと思うんですけど。
竜二
ふふふふ。これはね、太秦で、食えへん時にね、スタントマンみたいなことをやってたんでね。お城のお堀に後ろ向きにダ~ンって落ちたり、火の中を走らされたりね、死ぬなって思ったことは何回もありますよ。そんなんに比べたらウンコを食べるぐらい。
──いやあ、ウンコはウンコで厳しいッスけど(苦笑)。
竜二
まあ、そんなふうに解釈してやってたんですよ。しかも、京都にいた頃はやれどもやれども自分の手柄にならないわけじゃないですか。でも、ウンコはやればやっただけ評価してもらえるわけですからね。名前が残り、取材が来たりするわけですから。こっちのほうがクソ面白いなと(笑)。
──ただ、自伝を読ませていただいたんですけど、高校の時にお好み焼きデートして、彼女が鉄板にお好み焼きを吐いちゃったことがありましたよね。
竜二
そうそう。店員さんも周りのお客さんもドン引きですよ。それで彼女のことを思って、「頼んでもいないのにもんじゃ焼きが来たね」といって僕は食べたんですよ。
──うわあ~、想像するだけで凄まじい絵ですけど。でも、それって高校生の時ですよね。
竜二
そう。東京に来てからはディスコの帰りに中央線に乗って「気持ち悪い、吐きそうや」っていう彼女のために「しゃあないな、ここに吐け」って右の袖口から服の中に吐かせて、2回目は左で、3回目は胸元に吐かせて。「君のぬくもりを感じるよ」とかいっても「最低」とかいわれて。ゲロ食べた子も電車の中でゲロ吐いた子もそれっきり連絡がつかなくなって、俺の善意がわからんのかと!
──わかりにくいですよね(苦笑)。
竜二
いやいや、男はここまでやらなきゃダメなんですよ。タフじゃないとダメ! 杉良太郎じゃないけど、君は人のために死ねるかと。俺の場合は、人のために食えるかだけど、結局、僕の愛は伝わらないんだねえ。
──ゲロだけに酸っぱい思い出ですね(笑)。ともかくそれほど抵抗はなかったんですね。
竜二
まあ、普通の人よりはなかったかもしれないね。でも、自分の中ではあったんですよ。死ぬんちゃうかなって思いましたもん。だから、ゴックンはしなかった。
──どっちでも一緒ですよ!
竜二
いやいや違うんだって。さすがにゴックンすると身体が抵抗するんですよ。「山本竜二、それは食べ物じゃないぞ!」と。
──ワハハハハ!
竜二
ウンコ茶漬けの時なんて、永谷園のお茶漬けの元も入ってるから一瞬うまいんですよ。ご飯も上等なお米を使ってるからうまい。でも、コンマ数秒後にウンコの味がするんで「それは食べ物じゃない!」「戻せ! 出せ!」って(笑)。で、胸のあたりで心と身体の葛藤が始まって普通は口から出てくるんだけど、鼻からブワ~って出てきて鼻にウンコの匂いが染み付いてしばらく取れなくなって、息するたびにウンコの匂いがするという(笑)。
──壮絶ですね。ちなみに、お金のほうはどうだったんですか?
竜二
悪くなかったですよ。ウンコだけじゃなくてピンク映画や普通のAVにも出てましたから多い時には月に100万円ぐらいにはなってました。ただ、その前が全然食えなかったですからね。太秦の時もそうだったけど、そこを辞めて東京に出てきても仕事なんかないんですよ。仕方ないから昼間はテレビ局回ったりの営業をやって、夜に働く生活をずっとしてましたね。いろんな仕事をしましたよ。土方とか、呼び込みとかね。一番覚えているのは新宿のピンサロの仕事。でも、若くてね、やりたくてやってる仕事じゃないから、なんかこう惰性でやっちゃうんだな。それでホステスさんのウケが悪くてね。
──えっ、信じられないですけど。
竜二
態度悪かったんですよ。ホステスさんに呼ばれたら、「はい、ただいま」って片膝つかなきゃいけないんですけど、それがイヤで、ポケットに手を突っ込んで「なに? ああ、わかったわかった」ってこんな調子で。ホステスさんが「ちょっとあんた、なんなのその態度!」って怒っても、「なんや、オバハン、しょうもな。最低や、こんな仕事やってるヤツは」とか言って。
──のちのち自分がもっと最低なことをするのに(笑)。
竜二
そうそう! で、これはもうクビかなと僕は思ったんですよ。そしたら店長が心の広い人で、「お前、まだ仕事あるよ」って地下2階に連れていかれて。そこは潜水艦の中みたいに天井にパイプがいっぱい走ってて、ボイラーがあって熱いところでね。奥に先輩が二人いて、店長が「おい、山本! お前、今日からこの人たちと働け」って言うわけです。見たら一人は小人の方で、もう一人は凄い痩せた人なんですね。で、なにをするのかっていったら、ザーメンのついたおしぼり洗い(苦笑)。
──地下二階で小人とザーメン。どん底ですね、まさに。
竜二
それで、小人の方は梅ちゃんっていう人なんだけど、「お前、山本っていうのか、今日からよろしくな。俺は見てのとおり、身体がちっちゃいんでよ、うまく説明できねえからこいつのいうことちゃんと聞いてたら、仕事、早く覚えるからな」って言って痩せた人を指差すんですよ。でも、その人、実は唖の方で「おぅ、おぅ?」しか言えないの(笑)。
──シャレのわかる小人の方だったと(笑)。
竜二
いや、「よく聞きゃわかるんだよ!」って言ってたんですけどね(苦笑)。まあ、無茶苦茶な所でしたよ。忙しい時なんかおしぼりの数が間に合わなくなるから、ホステスさんたちから文句が出るんですね。そうすると、梅ちゃんが「おい、山本、真面目に働きすぎなんだよ、お前。相手も酔っぱらいだから忙しい時はな、見てろよ、洗わないの」って言って、ザーメン付いてるほうを裏にしてクルクルって丸めて出しちゃうの。「これで大丈夫なんだよ」って言われても心配ですからカーテンの隙間から見てると、お客さん、普通に顔拭いてんの(笑)。
──汚い! そんな生活をどのくらい続けたんですか?
竜二
一ヶ月。熱いんでね、汗が出てくるから額にブツブツが出てきたんですよ。俺は性病が感染ったかと思って、長谷川一夫さんじゃないけど、「役者は顔が命!」ってことで辞めることにしたら、梅ちゃんと唖の方が送別会をしてくれるっていうんです。野郎寿司っていまでもありますけど、歌舞伎町の風林会館の横に。あそこでおごってくれるっていうんで嬉しかったですよ。そしたらね、小人の梅ちゃんも唖の人も泣いてるんですよ。「なんで泣くんですか」って聞いたら「いや、やっとできた健常者の友達だったんだよ」って。それで俺ももらい泣きしちゃってね。なんで泣いたかっていうとね、夢に溢れて東京に出てきたのに、こう言ったら申し訳ないけど、いまこんな人たちに泣かれてるっていう自分の立場がどう考えても惨めで情けなくて。
──まあ、そのくらいどん底を味わわないと。
竜二
でもね、梅ちゃんは僕がね、ポルノ男優でバーっと出てきた時に風の便りで「山本竜二は昔、俺が面倒を見たんだ」って言ってるって聞いて、有難いなって思って。
──結局、そのバイトも大した金にはならなかったんですよね?
竜二
それはそうですよ。それで困ったなと思って当時付き合ってた大阪の彼女、最初の嫁さんになるんですけど、東京に呼んでヒモみたいな生活をしてたんですよ。で、千円ぐらいの小遣いをもらっちゃあ、新宿のしょんべん横丁で飲んでたんです。そこでポルノ映画の制作の方と知り合って、ピンク映画の道に入っていくわけです。
──彼女にはポルノに出ることになったってことは言ったんですか?
竜二
ちゃんといいましたね。「ポルノでも映画は映画だからね、いっときはしょうがないんじゃない。風間杜夫さんだってやってらっしゃったんだし」って理解はあったんですね。だけど、その理解を超えるような仕事までやるようになったんでねえ(苦笑)。
──とりあえず、ポルノで食いしのいで、一般作へというふうに望んでいたわけですよね。
竜二
なかなかそうはいかないんだよね。だって16年間ですよ。心の中ではもう無理だなと思ってましたね。もう僕は一生このピンク映画とか、AVでやっていくんだなあ。役者としてはこっちのほうだけなんだろうなと。でも、夢を捨てるのは辛いから、夢だけは捨てなかったね。だけども、現実的なことを考えるとじゃあどうなるのって。明日も明後日も来年もAVしかないじゃないって。でも、それでも奇跡は起きるんですよ。ミラクルなんです、すべて。ホン~ットにミラクル!
──ミラクルのきっかけはなんだったんですか?
竜二
ポルノとAVが続いていた時に秋山豊さんって監督さんからね、出演依頼が来たんですよ。僕は当時ね、スタジオ83ってとこでね、AVに出てたんですよ。それが最低のAVでね、要するに消し忘れですよ。当時、ラブホテルでビデオを貸し出して、自分たちのセックスを撮るのが流行った時期があって、それをホテルの経営者の人がダビングしてAVメーカーに買ってくださいってやってたんですね。作品ともいえないようなそんな作品ですよ。そんなビデオを商品化するために、最初と最後に僕が解説を入れてたんですよ、淀川長治の格好して。「みなさん、またお会いしましたね、今日のビデオは凄いですよぉ。どこかのホテルの消し忘れ。ちょっと写真お願いします。出てる人。誰か知りませんねぇ。怖いですね、凄いですね、素人の方がこんなこと、あんなことするんですねえ、びっくりしますよ。それじゃあ、またあとでお会いしましょう」っていうのを最初に入れて、終わったあとも「見ましたか。怖かったですね、凄かったですね、あの女の方、顔に受けてましたねえ。『もっと頂戴』いうてました。怖いですね、あれ、人妻なんですって。浮気ですよ、夫婦と違います。こんなんバレたらどないなるんでしょうね。はい、ではまた次週お会いしましょう。さいならさいならさいなら」ってやってて。
──最高じゃないですか(笑)。
竜二
これを見た秋山豊さんっていう人が「こいつ、オモロイ」ということで、自分の監督デビュー作の『奥様はマゾ』というのに使ってくれて、以来秋山監督の作品は必ず出してもらうってことになったんですよ。その頃たまたま秋山監督も伸び盛りで『奥様はマゾ』の次はデビューしたばかりの島崎和歌子ちゃん主演の『乙女物語-あぶないシックスティーン』というのを撮りはって、それで一般ものに僕も久しぶりに出してもらって、監督が関西テレビの深夜のドラマを撮ることになった時もまた呼んでもらったんですね。それがまた評判良くて、関西テレビのプロデューサーから、『ふぞろいのイレブン』という新しく始まる青春サッカードラマで学校の先生役に推してもらったんですよ。
──それは結構大きい役ですよね?
竜二
そうなんです。レギュラーなんですよ。嬉しいことにそれを撮影する場所が僕の親父もいた、実は親父も佐々木小二郎って役者だったんですけど、兵庫県宝塚撮影所ってところだったんです。
──凱旋ですね(笑)。
竜二
そうなんですよ。太秦じゃなかったけど、ようやく関西に帰れた。それで行ったら、「お前は佐々木さんの息子さんやなあ。よう帰ってきたなあ」いわれて。その秋山監督のおかげでそこまでの仕事にたどり着いた。で、その番組の打ち上げの時にプロデューサーさんに呼ばれて「山本くん、良かったよ。賛否両論だったんだけど君を使うにあたっては。子供番組だけにね」って言われて。
──その頃はまだキチンとしたAV男優ですよね?
竜二
そう、キチンとしたAV男優(笑)。だって宝塚の守衛のおっさんがね、僕が来た時に、「えっ、あんたAVの人やな。宝塚でもそんなの始めるの?」「いや、違いますよ。子供のヤツでんがな」って言うたら「えっ! 子供の相手しまんの!?」「違いますよ、話にならへんわ!」いうて(笑)。それぐらい、みんなビックリしてて。でも、あれね、関西では金曜の夜7時から30分の番組で視聴率22%取ってたんですよ。だから、プロデューサーさんが「またAVに戻るのはもったいない」って言ってくれて、大きな事務所に推薦してくれたんです。僕はそこで初めてマネージャーがつくようになって、それも、そのマネージャーはたまたま太秦にしょっちゅういってはった人だったんですよ、営業で。「僕、太秦は強いです。任しといてください。竜二さん絶対に故郷に帰れますよ。もう少し時間をください」っていってくれはって。そしたら、本当に帰れたんですよ。一番最初は僕のいた映像京都っていう旧大映京都の残党が作った会社。そこの番組『盤嶽の一生』っていう時代劇に呼んでもらって、そのあとは『水戸黄門』『必殺』と東映、松竹、大映と全部帰れたんです。「よう帰ってきた! お帰り!」って言われましたよ。
──太秦出てから…。
竜二
16年。ちゃんと山本竜二様っていう控え室があってね、嬉しいですよ。ホテルもとってくれはって全日空ホテル。堀川の二条城の前の。最高で俺、泣けたわ。その代わり、ちょっと面白くないっていう人もいましたね。「ああ、そうか、東京行ってAVとかポルノやってたらちょっとええ役で帰れるんや。ふ~ん」とか「おい、山本、ちゃんと芝居してくれよ、何回も何回も通行人させられるのはかなわんしな。一回でOKだしてよ」って。「そんないじめんといてくださいよ」って言って一応先輩なんで。
──そういう嫌がらせも含めて帰ってきたなって感じですね。
竜二
そう。ほとんどは喜んでくれましたからね。メシが食えん頃に世話になった照明の方に「竜二、よう帰ってきた!」っていわれて照明パッと当ててもらった時は嬉しかったなあ。泣けますよ。撮影の時も「おい、監督、さっきから竜二見てみい、ええ芝居しとるやないけ、アップ撮ったれよ」っていってくれて、みんなも「そうや、そうや」って。監督も「そうやな」って言ってアップにしてくれて……。嬉しかったですよ。
──リアル蒲田行進曲ですね。
竜二
だから、奇跡は起きるんやな、と。
──だから、例えウンコ食ってても、夢は叶うってことですよね。自伝には「目の前のことを本気でやっていけば道はできる」というようなことを書かれてましたけど。
竜二
だから、継続は力なりですよ。ただし、生半可な継続じゃダメですよ。若い人には「続けていれば、時間はかかりますけど、どうにかなりますよ」といってあげたいね、僕がそうやったから。それと、自転車理論って本にも書いてるんだけど、例えば、役者を目指して東京来てはる人って多いよね。そうするとメシが食えんから土方やったり、副職をやる。そうすると本職の仕事が年に何回かしかないのね。それではダメなんです。どんなにマイナーな業界でもいいから金を貰ってやらないと。僕の場合はポルノ映画やAVだったけど、365日ほぼ毎日カメラの前に立ってたから、自転車でいうと上等な自転車じゃない、ボロボロの自転車だけど、毎日乗ってた。そうすると、横から急に子供が出てきたり、車が出てきても対処できるんですよ。でも、一年に何回かしか乗らない人はバーンってぶつかってしまう。どんな自転車でもいいから乗り続けてないとダメですよって。いまでもたまにいい自転車しか乗りたくない人たちと共演することがあるんですよ。そういう人たちは楽屋では偉そうなこと言ってても、現場にいったら手がカタカタ震えてるんですよ。
──なんでもいいから現場にいなさいと。
竜二
その代わり、どんな現場であっても流してやっちゃダメです。どんな最低の現場であっても、どんな最低の作品であっても絶対に俺だけはオモロイと言われるようにやらないといけないんです。
──きつい時代をしのぐ時の考え方ってなにかありますか?
竜二
う~ん、僕は3段階のことしかしないです。問題が起きたら、みんな最初は「えらいこっちゃ」と驚くでしょ。次は「どないしよ?」と思案する。でも、3つ目がたぶん違ってて「ま、ええわ」ってコレですわ。ま、どうにかなるわっていうのが秘訣といえば、秘訣。深く考えないってところですね。実は、今日現在もね、「殺す」っていう人に脅迫されてるの。いまも乗り込んでくるかもわからへん。怖いけどね、ケセラセラ。それが僕のしのぎ方ですね。
※ペキンパー第弐号にはインタビュー本文に加え、付録DVDにインタビューの様子や特別映像が収録されています!
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