ここでパニック運動について説明する。パニック運動はフランスの演劇家アントナン・アルトーによる“残酷劇 (Théâtre de la Cruauté)”と牧神パン(Pan)に触発されたことで結成された。 それは動脈硬化に陥った当時のシュルレアリストたちから真のシュルレアリズム(超現実主義)を取り戻す運動であり、受動的な観客への挑戦だった。もっとも有名な演目は65年5月、パリ祭りで行われた四時間に及ぶものだ。それは、1リットルもの牛乳を浴びせられ、去勢される神父、男(ホドロフスキー)が着る生肉の服を「怒り」に扮した女たちが鋏で切り、その肉を揚げて観客に食べさせる…etc、という内容だった。パニック運動についてはホドロフスキーの著書に詳しい。また、インターネット上に動画もあるので是非観て頂きたい。
三番手に登場したのが梵天レコードよりリリースしたドゥーム・コンピレーション“All The Witches’ Day”にも参加してくれたスラッジコア・バンドZothiqueのヴォーカル & ギターのシモナカ氏とドラムのウエノ氏(本ライブではギター)。
David Alan Coe – “River”、Hank Williams III – “Gone But Not Forgotten”、中島らも – “いいんだぜ”という、“アウトロー”・アーティストのカバー三曲を披露。
四番手の錐針(すいばり)はオルタナ~シューゲイザーの影響も感じさせるドゥーム・バンドBlack Creek Driveのギタリスト、Kusumi氏と東京のスクリーモ・バンドBackstitchのヴォーカル、蓮理氏のユニットで、この日唯一の女性ヴォーカル。ポップな楽曲を挟みつつも、女の情念渦巻くダークな楽曲を中心とした構成。歌謡曲的なドロドロした感じではなく、オルタナ~グランジ風の乾いた“黒さ”を強く感じた。
この日のライブ動画はこちら。
10 Great acoustic songs by Doom, Sludge bands/musicians.
Corrupted – “月光の大地” from “Se Hace Por Los Suenos Assesinos”(2004)
仙人が俗世を憂いているかのようなHevi氏の歌声と物悲しいアコギのみで構成された、17分に及ぶCorrupted史上最も異色なナンバー。正座して聴きましょう。
2011年リリースの4thアルバム“Garten Der Unbewusstheit”ではこの曲をアレンジした“Gekkou no Daichi”が収録されている。こちらはアコースティックなのは最初と最後の数分間のみ。
Southern Isolation – “Southern Man I Am” from “Southern Isolation” (2001)
初期はドゥームメタルの最重要バンドであり、90年代以降はハード・ロック色を強め、”Manic Frustration”などのマスターピースを創り上げたTroubleのアコースティック・アルバム。この曲は“Manic~”収録曲の再録ヴァージョン。
Eric Wagnerは脱退し、現在のヴォーカルは元Exhorder他のKyle Thomas。Eric WagnerはBlackfingerを結成して活動中。
番外編 EXTRA
Doom, Sludgeではないが、その界隈とも繋がりがあるバンド/ミュージシャン。
Hexvessel – “I am The Ritual” from “Dawnbearer”(2011)
ブラック・メタル・バンドDodheimsgard等で知られるイギリス人ミュージシャン、Kvohstを中心に結成されたサイケデリック・フォーク・バンド。Kvohst以外はフィンランド人のメンバーで構成されている。Roadburn Festival 2013内でElectric Wizardがキュレートした“Electric Acid Orgy”に出演、Lee Dorianが絶賛するなどドゥーム系ミュージシャンからの支持が厚い。現時点の最新作”Iron Marsh”(2013)にはPursonのRosalie(オノ・ヨーコのカバー!)、Blood CeremonyのAliaがゲスト参加している。
Chelsea Wolfe – “Spinning Centers” from “Unknown Roms: A Collection Of Acoustic Songs”
カリフォルニア出身の女性ゴシック・フォークSSW。
カリフォルニア出身とは思えない、呪術的かつ鬱屈としたサウンドは、“ドゥーム・フォーク”、“メンヘラ・フォーク”とも形容される。
彼女もRoadburn Festival 2012に出演、わが国ではDaymare Recordsが2012年に1st,2ndの国内盤をリリースし、GodfleshやSunn O)))、Deafheaven等が出演したLeave Them All Behind 2012で来日。
番外編その2 EXTRA Part.2
完全なるおフザケ。
Acoustic Wizard – “Vinium Sabbathi” from “Please Don’t Sue Me vol.2”
Electric Wizardの曲をアコースティックでカバーするという、キマってる時に思いついたことをそのままやっているとしか思えないプロジェクト。「お願いだから訴えないで」というタイトルからも明らかなお遊びプロジェクトだが、やってることは至ってマトモ(?)、というか、かなりイイ。
Trippy Wicked – “Killfornia” (Church of Misery cover)