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2011年10月 写真:川保天骨 インタビュー:中村カタブツ君 協力:(株)真樹プロダクション
※このインタビューは、ペキンパー第弐号に収録されたものをPECKINPAH DIGITAL掲載用に編集したものです。
──先生、男ってよくメンツにこだわるっていいますが、あれはどうなんですか。
真樹
メンツ、メンツっていうのは、気持ちはわかるが、俺なんかはあんまり考えたことはねえな。ダメな時にメンツだけにこだわってると繕いようがなくなり、そこでギブアップだよ。ということはメンツなんていらねえってことになるよな。それよりも自分との戦いだよ、大事なのは。実をいうと戦いにおける強さってことについちゃ、俺は人の意見とちょっと違うんだな。多くの師範たちは稽古して強くなれっていうけれども、自分より強い奴にはいくら稽古しても勝てないよ。そんなこと俺が大きい声でいうのもなんなんだけど(苦笑)。
じゃあ、なんのために空手をやってるのかといえばさ、一番の強敵は自分だからだよ。もう一人の自分との戦いの繰り返しで男っていうのは生きてるようなもんなんだ。俺にしたって、稽古もしないで酒を飲みたがるもう一人の自分がいる。同時に「それじゃあちょっとまずいんじゃないか」と思う自分がいて、そのせめぎ合いだな。で、しょうがねえから9時半までやるかって。要するに克己心ということで、一番強敵なのはもう一人の自分なの。その自分に勝った時の小さな達成感が毎日あるわけ。今日は20キロ走りたくないと思ってたのが走れた。そういうごく身近な達成感が、人間がくたばらないで強くいきていける原動力になってると思う。大きい達成感っていうのはそうそうクリアできないだろ。たとえ設定したところで達成できなければしょうがねえ。小さな達成感をクリアしていくことが大切なんだよな。
──それが瞬間瞬間の真剣勝負ってことなんですね。
真樹
そういうことにつながっていくよな。
──先生の場合、メンツでいうと自分がどうのこうのっていうよりも仲介役に回ることが多いですよね。極真会が分裂した時もそうですし、犬猿の仲といわれた佐山聡さん(初代タイガーマスクにして現・掣圏真陰流興義館総監)と前田日明さん(総合格闘技リングス CEO 。現在不良格闘技 THE OUTSIDER を主催)を対談の席につけた時なんかもそうですけど、あんな大変なことをなぜ引き受けるんですか。
真樹
だって佐山と前田の両巨頭をあのまんまにしておくほうがおかしいだろう。昔、あれほど熱く戦った二人をさ、あのまま仲違いさせちゃったままリタイアさせちゃったら、それはやっぱり格闘技界の損失だよ。俺は巨視的に捉えて考えるわけだ。同じ会場に居合わせるだけでも奇跡だっていわれてた二人を俺が「来い、来い」といって『週刊文春』で対談させて、最後に佐山が「前田、今日はお前に会えて良かったよ」って。2時間の苦難の末にだよ。最初の1時間ぐらい二人とも一言も口きかねえんだ。俺ばっかワイン飲んで酔っ払っちゃったよ(苦笑)。で、佐山は飲めねえだろ。前田に付きあえてっていったら「自分は今日は車ですから」って。「もうお前らなんか喋れ」って俺が切れちゃってさ(笑)。で、喋ったのがやっと1時間ぐらい経ってからだよ。俺は前田も可愛いし、佐山も可愛い。二人がいる格闘技界も大事だよ。大山先生に会う前からやってた柔道を含めていうともう60年以上いる世界だからね。いまはちょっと景気が悪くてプロ格闘技界も大変だけど、プロだけが格闘技とはいえねえからな。
──極真が割れた時も両方の組織から間に立ってくださいっていわれてましたよね。
真樹
そうだけど、俺は割れたのなんか今でも認めてねえ。単なる仲間割れだ、兄弟喧嘩だ。早くいい加減仲直りしろって。ずいぶん前に、ある極真の人間と飲んだけど、「先生のことは大好きなんですけど、自分の嫌いなヤツのことも可愛がってるからイヤだ」とか言ってさ。「お前なんだ、その女々しさは」って(笑)。おもしれえだろ。最近の奴っていうのは大概こうなんだよ。男の焼きもちは女よりも始末が悪い。女性の焼きもちなんて可愛らしいもんだよ。「私とあの人とどっちが大事なの!」って。そんなの「どっちも可愛いよ。3 P やるか?」っていったら、それで終わっちゃう(笑)。だってどっちも本当に可愛いんだからベッドにおいでだよ。
──メンツにこだわるっていうのもどこか嫉妬に似た感覚なんですかね。
真樹
だから、俺は『格闘家は女々しい奴が9割』(東邦出版)って本を書いたろ。あれを前田にプレゼントだって渡したんだよ。そしたらジーッと表紙を見てて、「先生、格闘家は女々しいヤツが9・9割です」って 吐 ( ぬ ) かしやがった。「じゃあ、残りの0・1割にきみも入るわけか」っていってやったら赤くなってたけどな(笑)。ただなあ、女々しいから弱いんじゃない。女々しいから自分の逃げ道を、自分の生き延びる道を考えるから負けないんだね。弱さを持っていない人間なんていないよ。弱さなんかないって言い切れる人間と酒飲んだって面白かないよ。弱さはみんな平等にあって、それを克服しようとするだろう、普通の人間なら。それで克服できたらそこで終わりじゃなくて、また別の弱さが出てくるんだよ。次から次へと押し寄せてくる、それとの格闘でもあるわけだよな、男が生きるってことは。その弱さから逃げちまう手もあるけど、その瞬間だよ、男の生き方が小さくなるのは。逆に逃げなければ、死ぬまでやっぱり苦しさは続く。だけど、それをあえて甘受するのが強さを知るっていうことになるんじゃねえか。だから、強さを知ることは弱さを知ることと背中合わせよ。しかしだからといって人に俺の弱点はこうだっていうヤツもいねえだろ(笑)。強さもひけらかすとアホみたいだし、弱さも吹聴すればバカみたいなもんだしさ。だから、男はつらいよ、なんだよ。
──両方人には言えないと。
真樹
しゃべれないよ。男は黙って真剣勝負なんだよ。女性はワーワー言って、ガーッと泣いて涙の許容量以下になればあとはニッコリできる。バケツ一杯だったものが七分目ぐらいまで減れば泣きやんでニッコリできるんだよ。だけど、男の涙っていうのはそういうもんじゃないんだ。全部空っぽになる時以外は泣かない。それぐらいは男として生まれてきたからには男の宿題というかさ、手前に課していかなければ甲斐がないんだ。違うか?
──強さも弱さも黙って我慢するんですか。
真樹
だってさ、男はこういうもんだとか言うという以前に、やっぱり最終的には女性を守んなきゃいけない立場だろ。女性は子孫を増やさなければいけない立場で、その女性を守ってやらなければ子孫なんて増えていかねえんだから。だから、男と女の違いっていうのはあるんだけど、男らしさ、女らしさっていうのは立場の違いだけでしかないよ、突き詰めていっちまえば。だから、男が男らしくあろうというのは自分が守んなきゃなんない女との出会いがあって、この女をどうしたら守ってやれるかという努力を人知れずするところなんだな、やっぱりな。
──なんのために強くならなければいけないかその根本を踏まえなければ、強さに意味なんかないと。
真樹
そういうことだよ。それにやっぱり女性は可愛いしな、いないと困るだろ(笑)。
──最後に、先生のファッションについてもお聞きしたいんですが。
真樹
ファッション? ああ、俺はいまやグラビアアイドルだからな(笑)。
──ホントに昔から格好良いと思ってたんですけど(笑)。
真樹
変わらねえだろ? 村上竜司(世界空手道連盟士道館・士魂村上塾塾長)に「先生、服装が 50 年変わってないですね。 20 歳の時から 70 まで同じ格好ができるのが凄い」っていわれたけど、あれは褒めてるわけじゃねえよな(笑)。
──いえいえいえ。ちなみに洋服は業者さんが道場まで持ってきて、それで選ぶんですよね?
真樹
そうだよ。店に行くヒマがねえから、ちっちゃいトラックみたいなのでハンガーにぶら下げて運んできてそこから選ぶんだな。プレタポルテならそうだな。生地から選ぶオートクチュールは最近あんまりやってねえな。
──プレタポルテとオートクチュール(笑)!
真樹
だいたいシーズンごとに一年に4回は来るよな。あと海外では目についたものを買うよ。空のスーツケースを持って行って、一杯にして帰ってくる。俺もヒマがあればショッピングは嫌いじゃねえからな。たとえば、最近は東南アジアによく行くんだけど、スーツケースを一杯にして日本を出てもな、向こうに行くと合わないんだ。やっぱり現地は日本でイメージしていっても気候も雰囲気も違うんだな。だったら、現地で買ったほうが手っ取り早いだろ。それで帰りに一杯にして帰ってくる。
──現地調達が一番。
真樹
ちょっと前にベストセラーになった『人は見た目が9割』(竹内一郎著)って本があったけど、大事なんだ、服装って。日本人っていうのは武士の時代の頃から妙なやせ我慢の美学があって“男子は辺幅を飾らず”といってな。身の回りのことを気にしてるヒマがあったら内面を向上させろっていう考え方だ。男がお洒落にこだわるのは女々しいってことなんだけど、絶対そうじゃない。人の印象っていうのが見た目で九割決まるとすれば、大事な才能のひとつだよな。そう考えないと話があわなくなる。それは食い物と比べればよくわかる。食えればなんだっていいって奴もいるだろ? ご馳走なんて考えないんだな。満腹になればなんだっていい。そういうのと同じで着れればなんでもいい、裸が隠れればなんでもいいっていうね。本当は裸が一番楽だけど着る以上はさ、ちっとはほかの奴と違った格好をするべきだよ。ところが、いまの若い奴っていうのはほかと同じ格好をしたがるんだよな。そうしないと不安なんだよ、自分だけ、一人で浮いっちゃうとかいって。俺なんか中学の時に親父の背広を着て学校に行って、よく立たされたもんだぜ(笑)。
──中学の時から(笑)。
真樹
だって、面白くもなんともねえだろ、来る日も来る日も詰襟じゃあ。それがいまはみんなと一緒でいたいという発想なんだな。だから、若い連中は“なんとかファッション”とかって決まってきちゃう。
──結局パターン化されてしまいますね。
真樹
それならそれでもいいけどさ、どうせなら 10 人いたら俺が一番目立つというぐらいは考えねえと。目立ってなんぼの世界ではないにしても、少しはそういうのもあっていいよな。
──ちょっと言いにくいんですが、先生のファッションはヤクザの方たちよりもヤクザ的で目立つというか(笑)。
真樹
ヤクザから「一番ヤクザらしい格好だ」って言われたんだから(笑)。大阪の街を4人で歩いて、俺だけがカタギであとはみんなヤクザなのに「なんか親分みたいですね」って言われてな(笑)。排除条例とかあるから、いまは一緒に歩くこともできねえけどな。
──だから、いまやあちらの世界でもファッションリーダーというか(笑)。
真樹
ガハハハ! だからって昔と同じ格好をしてるだけなんだよな。俺は中間色とかボケた色は嫌いだからだいたい原色になるんだよな。それだけの話だよ。
──服装にこだわるっていうのはきちん見栄を張るっていうことにもつながるんですか?
真樹
いや、見栄じゃなく見映えだ。見栄を張ってるわけじぇねえんだ。醜さを消して、人にいい印象を与えたいっていうのは見栄じぇねえだろう。相手に協力的な態度を取って、相手に不快感を与えないというのが見映えだ。だけど、見栄というのは自分だけが背伸びして相手のことなんかどうでもいいっていう考え。相手が主になるか、自分が主になるかは大きな違いだよ。見映えにこだわるというのは、相手から自分を見ているという一つの認識であり、それはやっぱり自分の責任感でもあるわけだしな。
──ファッションひとつとっても奥が深いですね。今日は勉強になりました!
真樹
ああ。こんな話でよければいつでも聞きにおいで(笑)。
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2011年10月 写真:川保天骨 インタビュー:中村カタブツ君 協力:(株)真樹プロダクション
※このインタビューは、ペキンパー第弐号に収録されたものをPECKINPAH DIGITAL掲載用に編集したものです。
※インタビュー第01回はこちら。
──先生、男ってよくメンツにこだわるっていいますが、あれはどうなんですか。
真樹
メンツ、メンツっていうのは、気持ちはわかるが、俺なんかはあんまり考えたことはねえな。ダメな時にメンツだけにこだわってると繕いようがなくなり、そこでギブアップだよ。ということはメンツなんていらねえってことになるよな。それよりも自分との戦いだよ、大事なのは。実をいうと戦いにおける強さってことについちゃ、俺は人の意見とちょっと違うんだな。多くの師範たちは稽古して強くなれっていうけれども、自分より強い奴にはいくら稽古しても勝てないよ。そんなこと俺が大きい声でいうのもなんなんだけど(苦笑)。
じゃあ、なんのために空手をやってるのかといえばさ、一番の強敵は自分だからだよ。もう一人の自分との戦いの繰り返しで男っていうのは生きてるようなもんなんだ。俺にしたって、稽古もしないで酒を飲みたがるもう一人の自分がいる。同時に「それじゃあちょっとまずいんじゃないか」と思う自分がいて、そのせめぎ合いだな。で、しょうがねえから9時半までやるかって。要するに克己心ということで、一番強敵なのはもう一人の自分なの。その自分に勝った時の小さな達成感が毎日あるわけ。今日は20キロ走りたくないと思ってたのが走れた。そういうごく身近な達成感が、人間がくたばらないで強くいきていける原動力になってると思う。大きい達成感っていうのはそうそうクリアできないだろ。たとえ設定したところで達成できなければしょうがねえ。小さな達成感をクリアしていくことが大切なんだよな。
──それが瞬間瞬間の真剣勝負ってことなんですね。
真樹
そういうことにつながっていくよな。
──先生の場合、メンツでいうと自分がどうのこうのっていうよりも仲介役に回ることが多いですよね。極真会が分裂した時もそうですし、犬猿の仲といわれた佐山聡さん(初代タイガーマスクにして現・掣圏真陰流興義館総監)と前田日明さん(総合格闘技リングス CEO 。現在不良格闘技 THE OUTSIDER を主催)を対談の席につけた時なんかもそうですけど、あんな大変なことをなぜ引き受けるんですか。
真樹
だって佐山と前田の両巨頭をあのまんまにしておくほうがおかしいだろう。昔、あれほど熱く戦った二人をさ、あのまま仲違いさせちゃったままリタイアさせちゃったら、それはやっぱり格闘技界の損失だよ。俺は巨視的に捉えて考えるわけだ。同じ会場に居合わせるだけでも奇跡だっていわれてた二人を俺が「来い、来い」といって『週刊文春』で対談させて、最後に佐山が「前田、今日はお前に会えて良かったよ」って。2時間の苦難の末にだよ。最初の1時間ぐらい二人とも一言も口きかねえんだ。俺ばっかワイン飲んで酔っ払っちゃったよ(苦笑)。で、佐山は飲めねえだろ。前田に付きあえてっていったら「自分は今日は車ですから」って。「もうお前らなんか喋れ」って俺が切れちゃってさ(笑)。で、喋ったのがやっと1時間ぐらい経ってからだよ。俺は前田も可愛いし、佐山も可愛い。二人がいる格闘技界も大事だよ。大山先生に会う前からやってた柔道を含めていうともう60年以上いる世界だからね。いまはちょっと景気が悪くてプロ格闘技界も大変だけど、プロだけが格闘技とはいえねえからな。
──極真が割れた時も両方の組織から間に立ってくださいっていわれてましたよね。
真樹
そうだけど、俺は割れたのなんか今でも認めてねえ。単なる仲間割れだ、兄弟喧嘩だ。早くいい加減仲直りしろって。ずいぶん前に、ある極真の人間と飲んだけど、「先生のことは大好きなんですけど、自分の嫌いなヤツのことも可愛がってるからイヤだ」とか言ってさ。「お前なんだ、その女々しさは」って(笑)。おもしれえだろ。最近の奴っていうのは大概こうなんだよ。男の焼きもちは女よりも始末が悪い。女性の焼きもちなんて可愛らしいもんだよ。「私とあの人とどっちが大事なの!」って。そんなの「どっちも可愛いよ。3 P やるか?」っていったら、それで終わっちゃう(笑)。だってどっちも本当に可愛いんだからベッドにおいでだよ。
──メンツにこだわるっていうのもどこか嫉妬に似た感覚なんですかね。
真樹
だから、俺は『格闘家は女々しい奴が9割』(東邦出版)って本を書いたろ。あれを前田にプレゼントだって渡したんだよ。そしたらジーッと表紙を見てて、「先生、格闘家は女々しいヤツが9・9割です」って 吐 ( ぬ ) かしやがった。「じゃあ、残りの0・1割にきみも入るわけか」っていってやったら赤くなってたけどな(笑)。ただなあ、女々しいから弱いんじゃない。女々しいから自分の逃げ道を、自分の生き延びる道を考えるから負けないんだね。弱さを持っていない人間なんていないよ。弱さなんかないって言い切れる人間と酒飲んだって面白かないよ。弱さはみんな平等にあって、それを克服しようとするだろう、普通の人間なら。それで克服できたらそこで終わりじゃなくて、また別の弱さが出てくるんだよ。次から次へと押し寄せてくる、それとの格闘でもあるわけだよな、男が生きるってことは。その弱さから逃げちまう手もあるけど、その瞬間だよ、男の生き方が小さくなるのは。逆に逃げなければ、死ぬまでやっぱり苦しさは続く。だけど、それをあえて甘受するのが強さを知るっていうことになるんじゃねえか。だから、強さを知ることは弱さを知ることと背中合わせよ。しかしだからといって人に俺の弱点はこうだっていうヤツもいねえだろ(笑)。強さもひけらかすとアホみたいだし、弱さも吹聴すればバカみたいなもんだしさ。だから、男はつらいよ、なんだよ。
──両方人には言えないと。
真樹
しゃべれないよ。男は黙って真剣勝負なんだよ。女性はワーワー言って、ガーッと泣いて涙の許容量以下になればあとはニッコリできる。バケツ一杯だったものが七分目ぐらいまで減れば泣きやんでニッコリできるんだよ。だけど、男の涙っていうのはそういうもんじゃないんだ。全部空っぽになる時以外は泣かない。それぐらいは男として生まれてきたからには男の宿題というかさ、手前に課していかなければ甲斐がないんだ。違うか?
──強さも弱さも黙って我慢するんですか。
真樹
だってさ、男はこういうもんだとか言うという以前に、やっぱり最終的には女性を守んなきゃいけない立場だろ。女性は子孫を増やさなければいけない立場で、その女性を守ってやらなければ子孫なんて増えていかねえんだから。だから、男と女の違いっていうのはあるんだけど、男らしさ、女らしさっていうのは立場の違いだけでしかないよ、突き詰めていっちまえば。だから、男が男らしくあろうというのは自分が守んなきゃなんない女との出会いがあって、この女をどうしたら守ってやれるかという努力を人知れずするところなんだな、やっぱりな。
──なんのために強くならなければいけないかその根本を踏まえなければ、強さに意味なんかないと。
真樹
そういうことだよ。それにやっぱり女性は可愛いしな、いないと困るだろ(笑)。
──最後に、先生のファッションについてもお聞きしたいんですが。
真樹
ファッション? ああ、俺はいまやグラビアアイドルだからな(笑)。
──ホントに昔から格好良いと思ってたんですけど(笑)。
真樹
変わらねえだろ? 村上竜司(世界空手道連盟士道館・士魂村上塾塾長)に「先生、服装が 50 年変わってないですね。 20 歳の時から 70 まで同じ格好ができるのが凄い」っていわれたけど、あれは褒めてるわけじゃねえよな(笑)。
──いえいえいえ。ちなみに洋服は業者さんが道場まで持ってきて、それで選ぶんですよね?
真樹
そうだよ。店に行くヒマがねえから、ちっちゃいトラックみたいなのでハンガーにぶら下げて運んできてそこから選ぶんだな。プレタポルテならそうだな。生地から選ぶオートクチュールは最近あんまりやってねえな。
──プレタポルテとオートクチュール(笑)!
真樹
だいたいシーズンごとに一年に4回は来るよな。あと海外では目についたものを買うよ。空のスーツケースを持って行って、一杯にして帰ってくる。俺もヒマがあればショッピングは嫌いじゃねえからな。たとえば、最近は東南アジアによく行くんだけど、スーツケースを一杯にして日本を出てもな、向こうに行くと合わないんだ。やっぱり現地は日本でイメージしていっても気候も雰囲気も違うんだな。だったら、現地で買ったほうが手っ取り早いだろ。それで帰りに一杯にして帰ってくる。
──現地調達が一番。
真樹
ちょっと前にベストセラーになった『人は見た目が9割』(竹内一郎著)って本があったけど、大事なんだ、服装って。日本人っていうのは武士の時代の頃から妙なやせ我慢の美学があって“男子は辺幅を飾らず”といってな。身の回りのことを気にしてるヒマがあったら内面を向上させろっていう考え方だ。男がお洒落にこだわるのは女々しいってことなんだけど、絶対そうじゃない。人の印象っていうのが見た目で九割決まるとすれば、大事な才能のひとつだよな。そう考えないと話があわなくなる。それは食い物と比べればよくわかる。食えればなんだっていいって奴もいるだろ? ご馳走なんて考えないんだな。満腹になればなんだっていい。そういうのと同じで着れればなんでもいい、裸が隠れればなんでもいいっていうね。本当は裸が一番楽だけど着る以上はさ、ちっとはほかの奴と違った格好をするべきだよ。ところが、いまの若い奴っていうのはほかと同じ格好をしたがるんだよな。そうしないと不安なんだよ、自分だけ、一人で浮いっちゃうとかいって。俺なんか中学の時に親父の背広を着て学校に行って、よく立たされたもんだぜ(笑)。
──中学の時から(笑)。
真樹
だって、面白くもなんともねえだろ、来る日も来る日も詰襟じゃあ。それがいまはみんなと一緒でいたいという発想なんだな。だから、若い連中は“なんとかファッション”とかって決まってきちゃう。
──結局パターン化されてしまいますね。
真樹
それならそれでもいいけどさ、どうせなら 10 人いたら俺が一番目立つというぐらいは考えねえと。目立ってなんぼの世界ではないにしても、少しはそういうのもあっていいよな。
──ちょっと言いにくいんですが、先生のファッションはヤクザの方たちよりもヤクザ的で目立つというか(笑)。
真樹
ヤクザから「一番ヤクザらしい格好だ」って言われたんだから(笑)。大阪の街を4人で歩いて、俺だけがカタギであとはみんなヤクザなのに「なんか親分みたいですね」って言われてな(笑)。排除条例とかあるから、いまは一緒に歩くこともできねえけどな。
──だから、いまやあちらの世界でもファッションリーダーというか(笑)。
真樹
ガハハハ! だからって昔と同じ格好をしてるだけなんだよな。俺は中間色とかボケた色は嫌いだからだいたい原色になるんだよな。それだけの話だよ。
──服装にこだわるっていうのはきちん見栄を張るっていうことにもつながるんですか?
真樹
いや、見栄じゃなく見映えだ。見栄を張ってるわけじぇねえんだ。醜さを消して、人にいい印象を与えたいっていうのは見栄じぇねえだろう。相手に協力的な態度を取って、相手に不快感を与えないというのが見映えだ。だけど、見栄というのは自分だけが背伸びして相手のことなんかどうでもいいっていう考え。相手が主になるか、自分が主になるかは大きな違いだよ。見映えにこだわるというのは、相手から自分を見ているという一つの認識であり、それはやっぱり自分の責任感でもあるわけだしな。
──ファッションひとつとっても奥が深いですね。今日は勉強になりました!
真樹
ああ。こんな話でよければいつでも聞きにおいで(笑)。
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