時代を駆け抜ける恍惚ドラマー! 通称ナベさん! 渡辺昭司 Watanabe Shouji インタビュー

2013年 写真・聞き手 川保天骨

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※このインタビューは『ペキンパー第参号』に掲載されたものです。

知る人ぞ知るフリージャズのドラマーとして還暦を超えた現在でも都内ライブスタジオで精力的にライブをこなしている渡辺昭司さん。彼が単なるミュージシャンではない事はこのインタビュー記事と付録DVDに収録した映像を見てもらえば読者にも分かってもらえると思う。面白い! カッコイイ! そして男の色気がある! ペキンパー読者にぜひその存在を知ってもらいたく、ご登場願った次第。

※インタビュー記事は実際のインタビューを分かりやすくまとめたもので、実際に本人がしゃべった言葉通りではありません。あくまでもインタビュー映像の補足ですので、ぜひ映像をご覧ください!

――今日はよろしくお願いいたします!

渡辺
こちらこそ。よろしくお願いいたします。

――今日はナベさんの昔の話、特に70年代、ナベさんが若者だったころの事を聞きたくて。というのも、私は1970年生まれなんですが、70年代の音楽とか映画、演劇、マンガなど、とにかくあの時代に創作されたモノに凄く惹きつけられるんですよ。60年代でも80年代でもない。とにかく70年代的なものに目がないんです。ナベさんは70年代から現在まで音楽をやり続けてるわけですけど、70年代当時の状況についてお聞かせください。

渡辺
福生に住んでて、バンド組んだんですよ。そこから始まってますね。

――70年代にバンド組むってどういう感じなんですか?今と違いますか?

渡辺
違いますね………。もっとバカでした。なりふり構わずっていう感じで。………、今の人は格好つけてる感じが多いでしょ。

――その当時は、どんな人たちが周りにいたんですか?

渡辺
その当時、福生って特別な場所だったんですよ。米軍ハウスがあって、絵描きさんとかバンドマンとかヒッピーみたいなのとか沢山住んでるんですよ。そういう場所に住んでましたから刺激的でしたね。あの頃はフランス哲学っていうのが学生のシンボルだったんですよ。憧れっていうのもありましたが。サルトルの『存在と無』とか、その辺は分かんないんだけど読んでましたね。ミッシエル・フーコーとかね。一時的ですけどね。それがフリージャズに向かう起点になったかもしれないですね。

――フリージャズですか。なべさんはドラムなので、色々な人と組めますよね。

渡辺
僕はでも、10何年かドラムやめてたんですよ。30後半からだいたい50になるぐらいまで叩いてないです。南米から帰ってきて、再び叩き始めたんで、ブランクがあるんです。

50歳で南米に渡る!

――南米はどうでした?

渡辺
南米いる時はよく現地の人と間違われましたね。

――ナベさん、インディアンみたいな風貌ですもんね。

渡辺
おばあちゃんの祖先をたどると、ちょっとだけ入っているらしいですね。

――ナベさん若い時はモテたでしょ?

渡辺
モテはしなかったけど、自分から女の子にアタックしてましたね。飲みに行ってきれいな子がいたら「きれいだね」って言うし、デートしたいと思ったらデート申し込む。断られても特に気にしないですね。未だに言っちゃうんですよね。こんな還暦過ぎてんのに。

――そうですか~。そういう風に中々言えない人が多いんじゃないですか?

渡辺
それはね、バカじゃないんですよ。自分が自分の事バカだと思ってれば、どんな事言われたって大丈夫でしょ。でもその前に本当にキレイだって思ったら言ってるからね。嘘ついてきれいだって言ったらバレますよ。僕は本気になって言いますからね。きれいだって。あと、自分がいい男だって思わない事ですね。『僕なんかこんなもんだ! でも君はきれいだね!』その気持ちを持ってるといいですよ。

――なんか、ナベさんお恋愛教室みたいになってますね。

渡辺マイカのキングストンで知り合った友達でサンディーっていう女の子がいたんです。僕は安いコテージに泊ってたんですが、やってきて「あんた、ドラム叩けるなら、来なさい」ってそのままアメリカ人専用のホテルに連れていかれて、そこのバンドのドラムに入れられたの。ゲストで。すごくいいホテルでね、現地の人は入れないような高級ホテル。ドラム叩いてればタダで酒飲めるって言うんで、そりゃあ、叩きますよ。帰りにね、チップと一緒に特殊なタバコくれたりね。そのサンディーって女の子と次の日町にいたら、地元のラスタマンみたいなのが「マッシュル~ム、マッシュルーム」ってブラックマッシュルーム売りに来るんですよ。「ナンボだ?」って聞いたら「1ドルでいい」って言うんで「サンディー、今日はマッシュルームの日にするか!」ってなってマッシュルーム買って、そのまま二人で海を見てた事がありましたね。

――海見てたんですか………。

渡辺
その日の夕方からね。海が津波ですよ! もう! 正気に戻ったのは次の日の夕方ですから。

――丸一日トリップですか!

渡辺
ジャマイカでね、ポリスステーションの前でね、ラスタマンが葉っぱ売ってんですよ。ポリスとしてはそんな奴を捕まえても留置所でタダメシ食って釈放なんだから、捕まえない方がいいって感じなんですね。それで、近づいて行くと「ガンジャ、ガンジャ」って言うから「テイスティング プリーズ?」って。一発で効いた。「買った~!」ってね。そんな感じ。

――すごいですね、それは。

渡辺
まあ、でも30年ぐらい前ですから、今はもっと厳しくなってるかも知れませんね~。

まだまだ話は尽きないのだが……
ナベさんのナマな声がもっと聞きたい人は、ペキンパー第参号付録DVDをぜひ見て欲しい。

 

マジカル・パワー・マコとの音楽活動

ナベさんはマジカル・パワー・マコがバンド形態で活動していた1970年代初頭、行動を共にしていた。

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この雑誌記事は日本版「ローリングストーン」誌(1975年11月号)でその活動が取り上げられた時の記事。当時の雰囲気が凝縮された写真や記事が満載されていた。

 

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「ローリングストーン VOL.25」
(1975年11月号)の表紙。

 

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マジカル・パワー・マコ

 

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ナベさんの若いころの写真。