「多くの人はサイケデリックなトリップと、それが齎す強烈な結果に対して準備が出来ていないと思う」ロシアのサイケ/ストーナー・トリオThe Re-stonedインタビュー

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ロシアよりFuzzと愛をこめて。
水晶の煌めきと紫煙の靄の中で儀式を執り行うシャーマンたち。それがThe Re-stonedだ。
2012年に3枚目となるアルバムPlasmaをリリース。昨年はウェールズのサイケ/スペース・ロックバンドSendelicaのメンバーとのスタジオ・セッションを収録したRe-session V.2を発表するなど、Doom/Stoner不毛の地と言えるロシアで精力的に活動している。
バンドの歴史、ロシアのDoom/Stoner事情、そして今後について、バンドのギタリストであり、核であるIlya Lipkinに話を聞いた。

――Hi! 応じて頂きありがとうございます。初めに、The Re-stonedの歴史を教えてください。

Ilya Lipkin(以下IL)
Hello! バンドは2008年の8月にスタートした。実は、ここに至るまでは長い道のりだったんだ。95年から多くのグループ、様々なスタイル(ハードコアからデス・メタル、ダーク・フォークからフュージョン)でギターを弾いてきた。

8月にReturnという曲のデモをレコーディングしたら、驚いた事に、俺の友人たちがすごく気に入ってくれてね。グループを結成するアイディアが生まれた。友人や愛する人のサポートが無かったら、俺はスロー・スターターかもしれないな。それから、ライブをやるアイディアが生まれて、俺はベーシストとドラマーを探し始めた。俺の古い知人、Vladimir NikulinとAndrey Pankratovが最初のリズム・セクションだよ。彼らはその頃、いくつか別のプロジェクトでプレイしていた。俺たちは最初のライブをやって、それからファーストEP(※1)をレコーディングした。

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(※1) Return to the Reptiles 2009年リリース。

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活動開始当初のバンドの姿。

――The Re-stonedの現在のラインナップを教えてください。

IL
2013年からAlexander Romanov(bass-guitar)とAlexey Volnov(drums)がThe Re-stonedの新たなリズム・セクションだけど、新しいアルバム(現在リリースに向けて準備中)ではVladimir Muchnovが叩いている。彼はAnalog(※2)でもレコーディングに参加している。ヴォーカルは俺の妻、Veronika Martynovaが時々ヘルプしてくれている。

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(※2) Analog 2011年リリース。


――The Re-stonedを聴いたことが無い読者のために、どんなサウンドか説明していただけますか?

IL
The Re-stonedはサイケデリック・ストーナー・ロック・パワートリオ(guitar, bass and drums)だ。ラインナップについてはいつも自由に考えている。時々、ヴォーカルも入れるが、基本的にはインストゥルメンタルだ。アルバムによってサウンドは異なる。ハードなものもあれば、アトモスフェリックなものもある。考え抜かれた構成の曲やジャムをやっているよ。

――あなたはどこ出身ですか? The Re-stonedの現在の拠点は?

IL
俺たちはロシアのモスクワ出身だ。

――ロシアのDoom/Stoner Rockシーンについて説明していただけますか?もし好きなバンドがいたら、いくつか名前を挙げてください。

IL
難しい質問だな。俺たちの国で音楽を作るのは容易じゃない。常になんの報酬も無いまま、自分がやっていることのファンでいなければならない。だから、バンドは長続きしない。状況は年々キツくなっている。

素晴らしいバンドはいるよ。俺たちはBrand Band, The Grand Astoria, Without God, Reserve De Marcheと一緒にプレイした。

――どんなバンド、アーティストから影響を受けましたか?

IL
多くから影響を受けているけど、最も強く、顕著なのは、Black Sabbath, Jimy Hendrix, Led Zeppelin, King Crimson。

――Re-session V.2のリリースおめでとうございます。どのようにして実現したのですか? やってみてどうでした?

IL
ありがとう! リリースは後だけど、Re-session V.2(※3)はPlasmaより前にレコーディングしたんだ。ウェールズのSendelicaのロシア・ツアーの時に俺たちは何度か一緒にギグをやって、PeteとGlenにスタジオでのジャム・セッションをレコーディングしないかって提案した。マテリアルはなにも用意していなくて、俺たちはただスタジオに入ってプレイした。とても興味深い経験だったよ。彼らには彼らのスタイル、文化があるからね。

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(※3) Re-session V.2 2012年リリース。

Re-Session V.2で聴けるのは、その時レコーディングしたのと全く同じジャムではないんだ。俺は自分のスタジオでギターとエフェクトの追加をレコーディングして、多くを編集したから、純粋なジャムではない。
俺たちはPeteと、マテリアルを二つのパートに分けて、それぞれのグループ名義で好きにリリースできることで合意した。残念なことに、Peteは俺が不公平な振る舞いをして全てのマテリアルを盗んだと皆に言っているが、それは真実ではない!

この状況はとても不愉快だ。特に彼が誤った噂を広めていることにはね。

ところで、面白い事に、去年の2月にSedelica(とSurf Messengers)のベーシストGlenda PescadoとThe Restonedで一緒にギグをやったんだ。そのうち、彼とはもっと一緒にプレイすると思うよ。

――最新のスタジオ・アルバムPlasma(※4)について話しましょう。反応には満足していますか?

IL
Plasmaは俺にとって多くの意味を持っている。非常に不穏な時期にレコーディングしたんだ。俺はすべてのギター、ベース・パートをプレイして、ミックスした。ヴォーカルの入ったカバー二曲では、スタイルの枠を拡げた(アシッド・フォークにまで)。

不思議な事に、マスター・ディスクは俺の誕生日にできたんだ。良い兆しだと思ったよ。結果として、俺がヴィニールでリリースした初めてのアルバムになった。PlasmaのCDはモスクワのレーベルR.A.I.Gから、カラーと黒のヴィニールは有名なドイツのレーベルNasoni Recordsからリリースした。

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(※4) Plasma 2012年リリース。

――Plasmaには二曲のカバー、Jefferson AirplaneのTodayとPink FloydのJulia dreamが収録されています。なぜこの曲を選んだのですか? 歌っているのは誰ですか?

IL
俺の妻、Veronika Martynovaが歌っている。去年、Fruits De Mer labelからリリースされるThe Holliesのトリビュート盤用にヴォーカル入りのカバーを一曲レコーディングしたんだ。今はThe Re-stonedのヴォーカル入りの新曲を準備中だよ。秘密だけど!

――どんな機材を使いましたか? レコーディングはどこで?

IL
ドラムはたまたま、モスクワにある別のスタジオでレコーディングして、ギターとベースは俺の家のスタジオで。Gibson SG Custom 1972を使った。これは俺のメイン・ギターでスタジオでのレコーディングやギグで使っている。テレキャスター(一曲で)、12弦ギター、カスタム・ベースも使った。ギター・アンプはHiwatt Hi Gain 100。

モスクワにある会社U-soundとそこのエンジニアOleg Vorokhaとの実り多い提携は語らなければいけないな。U-soundはギターのsmall batch boutique stomp boxesを作っている。俺とOlegとの友人関係は、俺のサウンドとそのクォリティに深い影響を及ぼしていると思うよ。俺たちは二つの方向で仕事をしている。俺はペダルのデザイン、時にはコンサルタントとして。Olegの作ったFuzzは、本来は俺のために作られたものだったと誇りを持って言えるよ。二つのペダルには俺のアルバム(Return to the Reptiles EPとPlasma)のデザインが使われているんだ。

あと、俺は日本のMaxonのエフェクト・ペダルが大好きでね。とても音が豊かで、新しい音楽が作りやすいんだ。

――シリアスでない質問をひとつ。stonedするのは好き?

IL
信じないかもしれないけど、その質問をしたのは君が初めてだよ、ハハ。
ギグの前は、絶対にやらない。プレイや反応に支障が出るからね。これを聞いて、みんなが俺たちの音楽に幻滅しないことを願うよ。
ギグの後は……もう長いこと、音楽と観客とのエネルギッシュなやりとりがあれば、クスリ抜きで感覚を回復するには十分なんだ。俺たちの人生における主なクスリは音楽だ(サイケデリックな体験を試したことが無いわけではないよ)。重要なのは、何故やっているかを理解することだ。多くの人はサイケデリックなトリップと、それが齎す強烈な結果に対して準備が出来ていないと思う。

――The Re-stonedのライブ体験についてどう説明されますか?

IL
前に他のインタビューでも言ったけど、ライブはミュージシャンと観客にとって、シャーマンの儀式のようなものだ。音源を聴くだけで同じように感じることは難しい。その場の状況から即興で生まれるものだからね。どのライブも異なった精神、マテリアルで、常に何らかの方法でオルタナティヴだ。また、俺たちがプレイしたジャム(去年を通して、俺たちのセットではジャムをやることが恒例になった)を、もう一度繰り返すのは困難だろう。

――日本のバンドを知っていますか?

IL
ああ、日本には素晴らしいミュージシャン、バンドが多くいるね。Boris, Church of Misery, Zeni Gevaを聴いたことがあるよ。

――2014年の予定はありますか?

IL
いつも通り、多くの予定があるよ。今は新しいスタジオ・アルバムを仕上げている。ほとんど準備出来ていて、もうすぐミキシングが始まるところだ。
いくつかヨーロッパのフェスでもプレイする。可能なら、日本にも行きたいと思っているよ!

去年から俺の友人であるアストラハン(※ロシア南部の都市)のkraut-psychedelic バンドのVesperoとプロジェクトをやっているんだ。俺のでも、彼らの音楽でもない。psychedelic, space, kraut-rockにエレクトロニックなレイヤーをミックスしたものだ。そして勿論、インストゥルメンタルだよ。今年中にアルバムを仕上げてリリースできたらと思っている。

――最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

IL
日本でのライブDVDをいっぱい観たよ。日本のファンは最もクレイジーでフリーキーだね! そのままでいてくれ。いつの日か君たちのためにプレイしたいよ。あと、The Re-stonedを聴いてくれ!

今日はたくさんの質問をしてくれて本当にありがとう!

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